主人は、最近どういう訳か家事に目覚めたようで、暇さえあれば、
奥さんに「何か手伝うことない?」と聞いている。
猫の手も借りたい程忙しいこの時期に、果たして奥さんが、主人にどのような態度を
とるのか?吾輩は、興味津々でその様子をうかがうことにした。
それと同時に、何か嫌な予感もしていた。
奥さんは、昨年の師走はとても忙しそうでいつもと違い、とてもイライラしている様子であった。
そして、そのイライラはついに大爆発し、主人を直撃することになった。
吾輩の嫌な予感が的中した。
ある日のこと、主人が着替えた衣類を洗濯機の中に入れようとしていた。
すると、それを見ていた奥さんから、突然怒号が飛び出してきたのである。
奥さん:一体何をやってるの?脱いだ下着はひっくり返して裏側を表にしてから洗濯機の中に入れないと汚れが落ちないじゃない!
それから、主人が奥さんから頼まれた洗濯物を家の中に取り込もうとしていると、
その様子を見た奥さんが、また吠えた。
奥さん:洗濯物を家の中に取り込む時は、振ってホコリを落とさないといけないって教えたじゃない。私は、アレルギーがあるのよ!何回言ったらわかるの!
また、主人が食器洗いを手伝おうとした時は、ほどなくして、その任を解いた。
そして、こう言った。
奥さん:食器に、まだ、食べ物の残りや洗剤が付いているじゃない。
もう少しきれいに洗ってよ!本当に何をしても大雑把なんだから。
あなたの出来ることといえば、車の運転だけじゃない!
可哀想に主人は、奥さんから文句を言われっぱなしであった。
主人からしてしてみれば、今までやったことがない「家事」は、前人未到の地なのだ。
そして、呆れた奥さんは、こう言った。
奥さん:あなたが家事を手伝ってくれても、「家事手伝い」まではまだ、まだ、遠い道のりで、今の状況からすると「家事見習い」どころか「家事見習い補」だわ。
結局、また、私が最初からやり直さなくてはいけなくなるのよ!
ああ、とうとう言いたくもない文句を言い、ダメ出しまでしてしまったわ。
この様子を見ていた吾輩は、一生懸命奥さんの機嫌を取り、気を使って生活している
主人がなんだかとても可哀想に思えてきた。
世の中の結婚している男性はみんな、家庭でこのように気を使って生活しているのだろうか?結婚生活が上手くいくのは、本当に大変だなぁ。と思った。
ところがこの後、衝撃的な言葉が奥さんの口から飛び出してきたのである。
奥さん:私が「家事」について文句を言うのは、決して貴方をいじめている訳じゃないの。貴方のためにと思って言っているのよ。
もし、私が先に逝ったら「家事」ができないでどうやって生活するの?
日頃は短気な主人だが、今回ばかりは奥さんから何を言われても言い返すことはなく、素直に聞いていた。
その時、吾輩は、このことを自分のこととして考えだしたのである。
もし、主人や奥さんがいなくなったら、食べ物はどうやって得ることができるだろうか?
今まで生きてきて、自力で食べ物を得ることができたのは、目の前に飛んできたコバエ一匹と隣の家の人がくれた玉葱3個だけだ。※1。
とうてい、マグロの刺身やホッケの焼き魚、マメ(配合飼料)なんて食べられなくなる。
悲しいかな、やはり先立つものはお金で、吾輩には貯金もないので、一文なしだ。
それに、冬眠をしたことがないので、冬の寒い時期になったらそのままお陀仏だ。
吾輩は、急に自分の将来が不安になってきた。
主人と奥さん、健康に気を付けて、長生きしてくださいね。
そして、これからも、吾輩とカメ輔のことをよろしくお願いしますよ。
でも、どうして主人は、急に「家事」に目覚めたのであろうか?
吾輩は、不思議でしょうがない。
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※1:第8話 生涯獲得賃金 (『カメのひとりごと』未掲載)