カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第157話 落日

 

 


 8月某日吾輩は、主人が水槽の掃除を行っている間、いつものようにベランダを探索していた。

すると突然、吾輩の目の前にトングで挟まれたカメ輔が現れた。

この光景は、いつかどこかで見たことがあるような光景だった。

そして、主人は、カメ輔を吾輩の目の前に置き、睨めっこさせるように置いたのである。

「首を天空に伸ばしたカメ輔を見ると、しばらく見ないうちに随分大きくなったなぁ」と思った。

吾輩は、一瞬ハッとし、カメ輔に対して恐怖心を抱き、無意識に身を低く構え、口を大きく開き、カメ輔を睨むやいなや、突如右方向に向かって逃げたのである。

すると、それを見ていた主人は、慌ててトングで吾輩を掴み、水槽に入れたのである。

そして、主人が、吾輩に向かって言った。

主人:おい、カメ子、どうした?お前が逃げるのを初めて見たよ。

昔のお前なら、カメ輔に向かって大きく口を開けて威嚇し、くるっと回った後、カメ輔の甲羅の上に乗っていたなぁ。

とうとう、お前とカメ輔との力関係が逆転したようだ。

なんだか、とても寂しい気がしてきたよ。これは、「落日のカメ子」だなぁ。

吾輩は、主人の話しを聞き、ハッとした。

「落日のカメ子」という言葉はもちろん、吾輩とカメ輔の力関係が逆転したことで、

どうして主人が寂しい気持ちになるのかよくわからなかった。

そこで、主人はカメ輔に近づいて行き、聞いてみた。

主人:おい、カメ輔、カメ子のこと、どう思う?最近、いつものカメ子とちょっと違うんだよ!

もちろんカメ輔からは、何も返事はなかった。

そこで、主人は、呟いた。

主人:カメ輔に聞いてもカメ語は、よくわからないし、お前に感想を聞いても無駄だよね。

すると、主人とカメ子、カメ輔のやり取りを聞いていた奥さんが、突然、その会話に参加してきたのである。

奥さん:ずいぶん長い間、カメ子とカメ輔を散歩に連れて行っていないわねぇ。

たまにベランダに出した時ぐらい、二人を自由にさせてあげたら良かったのに。睨めっこをさせると、お互いがストレスを感じるでしょ。突然、そんなことをするからカメ子が、びっくりして怖がって逃げるのよ。

(カメ子:流石、奥さん良くわかっていらっしゃる!)

奥さんの話を聞いた主人は、にわかに顔を曇らせ、「ワシは、やっぱり、カメ子をいじったことになるのかなぁ?なんだかカメ子に悪いことをしたような気がする」と言ったのだ。

一方、自分のことで、奥さんから怒られている主人の姿を見て、吾輩も主人に対し、何か悪いことをしたように思えてきた。

このまま、奥さんから嫌味を言われ、ネチネチといじられ続けていくなんて主人が本当に可哀そうだ。

なんとかしなければ・・・。

ちょっと格好悪いが、カメ輔と相談することにしよう。

 

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【後記】

 あれから3日後、奥さんの忠告を無視した主人が、また、カメ子とカメ輔を睨めっこさせるように置いたのです。

すると、突然、カメ子が驚きの行動をとりました。

カメ子は、この前と同じように身を低く構え、口を開いてカメ輔を睨むと、突如右方向に向かって進み、「このまま逃げるのか」と思いきや、今度は急に反時計回りで旋回し、カメ輔の後ろに回って突進したのです。

そして、カメ輔の甲羅の上に乗って首を大きく伸ばし、辺りを見渡しました。

すると、これを見ていた主人は、こうなることを半ば期待していたのか?

ホッとしたような表情を浮かべ、言いました。

主人:ああ~良かった。ワシのせいで、このまま「落日のカメ子」にならなくて本当に良かったよ。そうなったら、カメ子がかわいそうだしね。それにしても、なぜ、ここ数日間で、カメ子の行動が急に変わったのだろう?もしかして、カメ子とカメ輔が、このことについて何か話し合ったのかもしれないなぁ。

今回はどうにか、カメ子の面子(めんつ)が保たれたようでホッとしました。

読者の皆さまへ

 カメが他のカメの甲羅の上に乗るって、どんな意味があるのでしょうか?

筆者は、主人と同様に喧嘩の強いカメが、弱いカメの甲羅に乗るものだと思っていました。

しかし、今回の一件で、ただ、この理由だけで相手の甲羅に乗るのではないことがわかりました。意外とその時の気分次第で、他のカメの甲羅に乗るのかもしれません。

カメは人間が思っている以上に繊細ですが、ある一方で、気分屋なのかもしれませんね。テレパシーが使える主人にしても、今回はそこまでは解読できなかったようです。

ところで、カメ輔は、カメ子を甲羅に乗せるなんて、人間が思っている以上に懐が深いカメなのかもしれませんね。

カメ輔君、偏見の目で見てごめんなさい。