*カメ子の着物姿の動画が見たい方は、Instagramのhino0719を検索してくださいね!
令和3年3月3日は、記念すべきカメ輔の銀幕デビューの日である。
ついに、この日がやって来た。
吾輩は、カメ輔の親になったような気持ちで、果たして上手く撮影ができるだろうか?と、とても心配をしていた。
(カメ輔は、このことを自覚しているのかな?)
その日の午前中、既に、吾輩とカメ輔は、甲羅の掃除を終え、そして、その瞬間がやって来た。
まず、トップバッターは吾輩だ。
奥さんは、吾輩をバスケットに入れ、いつもの撮影場所に連れて行った。
そこには、ひな壇があり、男雛と女雛が置いていて、
その周りには、綺麗な桜の花びらが敷き詰められていた。
奥さんは、吾輩を女雛の前に置いて着物を着せ、甲羅に桜の花を付けた。
撮影に慣れている吾輩は、顔を甲羅の中に引っ込め微動だにせずにいた。
すると、これを見ていた奥さんが言った。
奥さん:さすが、モデルね!私の気持ちを察して、おとなしくしてくれているわ。
いよいよ、次は、カメ輔の登場だ。
主人は、カメ輔を鷲づかみにし、男雛の前に置いた。
奥さんは、主人に「着物を着せるので、カメ輔が動かないように押さえていてね」と言うと、さっそく、甲羅の上に着物を付け始めたのである。
すると、カメ輔が甲羅の中に引っこめていた顔と足を外に出し、いきなりバタバタと暴れ出した。
そして、主人の手に、カメ輔の長く伸びた爪が刺さり、「痛い」と叫んで、カメ輔を手から離したのである。
まさに、ひな祭り会場は、カメ輔の独壇場になろうとしていた。
とうとう、吾輩の怖れていたことが、現実となってしまったのである。
野に放たれたカメ輔は、ぐるりと回りを見渡した後、糸の切れた凧のように、あらぬ方向に徘徊し出した。
ひな壇の周囲一面に敷き詰められていた桜の花びらは、カメ輔によって、蹴散らされ、無茶苦茶になってしまった。
吾輩は、「ああ~やってもーた」と、ため息をつくと、今度は、カメ輔が吾輩に向かって突進して来たのである。
そして、吾輩に言った。
カメ輔:お兄ちゃん。何とかしてよ!奥さんが、僕の甲羅に何か悪さをしているみたいなんだよ。(いつもの甲羅掃除とは、少し感じが違ったらしい)
吾輩は、「もう遅いよ」とカメ輔に言った。
すると、奥さんは、主人に「ああ~とうとうやってしまった。しょうがないわね~カメ輔はやっぱりモデルには向いていないのかも?きっと、カメ子とは、血が繋がってないかもしれないわね。カメ輔を早く捕まえて、元の位置に戻してよ」と言ったのだ。
奥さんは、主人にダメ出しをして、かなりご立腹の様子であった。
主人は、奥さんに言われたとおり、カメ輔を元の位置に戻した。そして、今度こそ、カメ輔が動かないように、しっかり甲羅を手で押さえたのである。
そして、カメ輔の目の前にバスケットを置き、壁を作ったのである。
すると、事は意外な方向に動き出した。
カメ輔は、目の前に大きな壁があることに気づき、しばらく静止したのである。
主人は、「ようやく、カメ輔が落ち着いたな」と、つぶやくと、そっと、前の壁を取った。
そして、すぐ、奥さんが、カメ輔の目の前にスマホを構え、撮影を開始したのである。
ところがどうだ。カメ輔は、スマホをじっと睨みつけ、動こうとはしなかった。
そして、しばらくして、カメ輔は、威風堂々と行進を始めた。
奥さんは、「カメ輔もやる時は、やるじゃない。カメ輔を見直したわ。
やっぱり、カメ輔は、カメ子と血の繋がった兄弟ね!あなたもついにモデルの虜になったわね」と言い放ったのだ。
そして、撮影は終了し、奥さんは、吾輩とカメ輔に、「ご苦労さん」と言った。
でも、奥さんの顔は、何だか寂しそうであった。
ああ~とんだ「ひな祭り」になってしまったなぁ。
男雛と女雛の前で、カメ輔(男雛)と吾輩(女雛)が、二人揃って仲良く映るはずであったのに、とんでもないことになってしまった。ああ、情けない。すべてカメ輔のせいである。いや、全て、吾輩の不徳の致すところである。
奥さんは、肩を落とし、「この企画は、失敗だったわ」とポツリつぶやき、撮影のチェックをした。
案の定、奥さんの表情は、段々と厳しくなっていき、それを見かねた主人がついに動いた。「どれどれ、ちょっと見せてみろ」と言い、奥さんが持っているスマホを取り上げ、覗いてみたのである。
そして、しばらくして、主人は、意外なことを言った。
主人:オーッ、カメ輔も、きまっていて、なかなか格好良いぞ。まるで、遠山の金さんみたいだ。左前足(失礼、手)で仁義を切り、半分はだけた着物の下から甲羅模様の入れ墨がちらっと見えているよ。
すると、それを聞いた奥さんの顔から、笑みがこぼれてきた。カメ輔は、この二人の会話を聞いていたのだろうか?
この後、主人は、カメ輔のいる水槽を覗き込んだ。すると、そこには、シュンとして落ち込んでいるカメ輔がいた。
それは、まるで、今まで格好良くきめていた、遠山の金さんではなく、金さんから裁きを受けた罪人であった。
【追記】
この後、SNSで、「カメ輔、銀幕デビュー」の評価を確かめてみました。
すると、予想以上に閲覧回数が多く健闘しているようでした。
これも、すべて、読者の皆さまが応援してくださったおかげだと思い、
感謝をしています。
どうもありがとうございました。
さっそく、この結果をカメ輔に報告します。
まさしく、「瓢箪から駒」とは、このことですね!
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