カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第150話 フィアンセ

 5月のある日、吾輩とカメ輔がベランダで遊んでいると、右上空から、見覚えのある鳥2羽が飛来し、吾輩の目の前に降りてきた。

とその時、その様子を見ていた主人が奥さんに、話し始めたのである。

主人:おい、見たか?鳩が2羽ベランダに飛んで来たぞ。しかも、カメ子と向かい合って何かを話している。

もしかしたら、あれは、鳩吉かもしれない。そして、一緒に飛んで来たもう1羽は鳩吉の○○○○○かなぁ?

もし、あの鳩が鳩吉だとしたら、以前に比べちょっと痩せて疲れているようだなぁ。

そこで、吾輩は、恐る恐る尋ねてみた。

カメ子:やあ、君は鳩吉かい?

すると、鳩がうなずいた。

それを見て、吾輩は一瞬ホッとし、そして言った。

カメ子:やっぱり鳩吉だったなぁ。突然のことで、びっくりしたよ。どうして、こんな所にいるの?あれっ、それに、隣にいる鳩とは、いったいどういう関係?

そう言うと、なぜか、鳩吉は辺りを見渡し、ちょっとがっかりしたような様子で「なんだ、何も食べ物がねーじゃねーか」と意味不明なことを言い、ゆっくり話し始めた。

鳩吉:久しぶりだなぁ。ひとつずつゆっくり話すから、ちょっと、待ってくれよ。

公園での出会いから、もうすぐ、1年になるなぁ?

相変わらず、お前は、人間に囲まれて良い暮らしをしているようだなぁ。ふっくらとして、顔色も良さそうだし。

あれ、隣にいるカメさんは、初めて見る顔だなぁ。いったい誰なの?

(カメ輔のことを言っているようである)

実は、あの公園で、カメを連れた怪しげな人間が来たという情報が耳に入った。

その話しを聞いて、俺はハッとした。そのカメはカメ子に違いないと思った。

なぜって?公園にカメを連れて来る人間なんて、そんなにいないだろうしね。

お前が、そんなに気が利くタイプじゃないのはわかっているので、「来る時は前もって、知らせてくれよ」とは言わないよ。俺自身も、食べ物を追いかけて、その日その日暮らしの貧乏暇なし人生だからね。

でも、その時から、お前のことが気になっていたのさ。

そこで、知り合いの鳩仲間とカラスやトンビにお前の居場所を聞いて回った。

すると、スズメの仲間から、近所にカメを飼っている家があるという情報を聞き、実際にその家に食べ物を物色に行ったことがあるというスズメがいた

(そのスズメはスズ吉かも?)

その家には、食べ物がたくさんあった。と言うことを聞いたので、「もしかして、カメ子の家かも?」と思い、さっそく、はせ参じたという訳さ。

俺の勘は鋭いので、当たったよ!

そして、もうひとつの質問、隣にいる娘のことだが、彼女は、俺のフィアンセだ。

どうだ、驚いただろう。お前から見れば、昔の俺とは、想像もつかないだろう?

お前と初めて会った時は、俺はひとりぼっちだったからなぁ。

俺はあの時、「一生一匹オオカミで良い」といきがっていた。

しかし、仲間からは、変わり者呼ばわりされつまはじきにされていた。

そして、公園では、2年ほど前からパンをくれる人間がだんだんと減ってきた。

巷の噂では、コロナウイルス感染症とロシアによるウクライナ侵攻でパンの価格が高騰したため、公園にパンを持ってくる人間が少なくなったそうだ。

鳩のグループに所属していない俺に、パンのシェアをしてくれる仲間なんか誰もいなかった。俺は、このまま餓死するんじゃないかと思っていた。

そんな時、突然、彼女が現れ、俺に優しい言葉をかけてくれ、食べ物を分けてくれた。そして、それがきっかけで、ずっと彼女と一緒に行動をするようになった。

鳩は、やっぱり一人では生きてはいけないと思い知らされ、共に助け合って生きていく生き物なのだと悟ったよ。

恥ずかしながら、この歳で初めて、鳩が集団で行動する意味がわかったよ。

それにしても、お前(カメ子)は良いよなぁ~人間というスポンサーがついていて、三食昼寝付きで、雨露をしのぐ家もあるし。

吾輩は、鳩吉の話しを聴き、なぜか複雑な気持ちになった。

そして、この後も鳩吉の話しは続いた。

鳩吉:今日は残念ながら、食べ物にはありつけなくて、フィアンセには申し訳ないことをしたが、お前と再び逢えたことは、俺にとっては大きな収穫だった。

そして、最後に、吾輩もお返しの言葉を言った。

カメ子:今日は、何も食べ物の用意がなくて済まないなぁ。

実は先日、主人と奥さんが食べ物のことで大喧嘩になり、当分の間この家でも食べ物が提供できなくなってしまったんだ。

すると、鳩吉は、フィアンセに向かい「もうそろそろ、おいとまするか」と言った。

そこで、吾輩が、「良かったら、来年の花見の席でまた会おう」と言うと、東の空を見ながら、鳩吉は、「無事に生きていればなぁ。俺はお前ほど長生きしないと思うよ」と呟いたのである。そして、彼女と一緒に東の空に飛び立って行った。

鳩吉は、相変わらず口が悪く、格好ばかりつけて、いけ好かないが、どこか憎めない。毒舌の中にも優しさが感じられる。だが、今回は、鳩吉はなんだか寂しそうであった。そんな鳩吉に対して、彼女は母性本能をくすぐられたのかもしれないなぁ。

それで、鳩吉は女性にもてるのかもしれない。

吾輩は、鳩吉が飛び立った東の空を眺めていると、主人が何かブツブツ呟いて近づいて来た。その時、吾輩は嫌な予感がした。

主人:カメ子は、鳩吉といろいろなことを話したようだね。

そこでワシは、鳩吉の彼女のために、本気で名前を考えることにした。

鳩吉には、また、今度会った時に伝えてくれよ。

ああ~吾輩の嫌な予感が的中したようだ。

さて、これからどうなることやら、吾輩には、ある程度の予想がつくが・・・。

先が思いやられるなぁ?

 

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【後記】

 それから、3日ほど経ったある日、主人から重大発表がありました。

主人:ワシが3日3晩寝ずに考えて、鳩吉のフィアンセの名前を"鳩子(はとこ)と命名したいと思う。果たして、鳩吉は、気に入ってくれるかなぁ?

これは、カメ子の名前を考えた時と同じ状況です。

実は、カメ子の名付けの親もご主人様だったのです。

世界に二つとない唯一無二の命名を期待したのですが・・・

でも、男でカメ子という名前は、珍しかったかもしれませんね。

 

:第109話・第110話・111話 

  刎頸の友Part1、2、3

:第146話 桜吹雪

:第147話 リアリスト

:第148話 鼻鉄砲