カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第138話 Compassion

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 ある日の午後、奥さんがスマホで誰かと会話をしていた。

今日の吾輩は、これといってすることもないので、奥さんが誰かと話しているのを聴くことにした。

すると、奥さんは、会話の途中でクスクスと笑い、また、ある時は大笑いをしていたのである。

そして、その話しの内容はこうだった。

ある日、奥さんの友達の知り合い(Aさん)が、歯科治療のため歯医者に行った。

その日、Aさんは、ウイッグを付けていた。Aさんが診察台に乗り、うがいを済ませた後、頭を診察台に付けて、治療が始まるのを待っていた。

すると、担当の歯科衛生士さんから「もう少し診察台の上の方に上がっていただけますか?」と言われた。

Aさんは、歯科衛生士さんに言われるがまま、寝たままの状態で診察台の上に上がった。

すると、突然、ウイッグが後頭部の方にズルッとずれ、おでこが見えてしまったのである。

Aさんは慌てて「ヤバイ、どうしよう?」と思った。

しかし、それを見ていたはずの歯科衛生士さんと先生は、「クスッ」とも「二ャッ」ともせず、淡々と歯の治療を開始したのである。

しばらくしてから、今日の治療が終了し、歯科衛生士さんは、何事もなかったかのように、「お疲れ様でした」と言った。

その一方でAさんは、「もしかして、ウイッグを付けていることが歯科衛生士さんと先生にバレたかもしれない」と思い、治療中も心臓がバクバクしていたそうである。

吾輩は、奥さんの話を聴いていて、よくわからないことが2つあった。

1つ目は、奥さんが、どうして笑いころげながら、この話を聴いていたのか?と言うことである。

いったいこの話のどこがおもしろいのだろう。

もう1つは、歯科衛生士さんと先生は、ウイッグがずれていることに、気が付いていたのかどうかわからないが、もし気が付いていたとしたら、知らないふりをしたのはなぜだろう?さらに、そもそも、どうして人間はウイッグなんか付けるのだろう?

付けなくても、少しは髪の毛が生えているじゃないか。

しかし、髪の毛というものは、人間にとって、本当に大事な物なんだろうなぁ~

吾輩は、主人がいつか話していた「オバケのQ太郎」の話を、ふと思い出した。

Q太郎の頭のてっぺんには、毛が3本生えているだけで、今でも話題になっているそうである。

髪の毛がないカメの吾輩にはよくわからない。

あっ、もしかして、奥さんは、Aさんがウイッグをずらし、髪の形が変わったことを想像して笑ったのかも知れないなぁ。そうだとすると、奥さんは、Aさんの身体的欠点?

(そこまで言う)を笑ったことになるよ。

ああ、毛が3本で思い出した。

今は亡き我が兄弟、カメ吉に対して、主人は「カメ吉の頭に毛が3本生えている」と言って、からかっていたなぁ。

カメにとっては、毛が生えるなんてとんでもない身体的侮辱だ。

奥さんといい、主人といい、平気で身体的欠点を笑ったり、からかったりして、相手の気持ちを傷つけたりしている。吾輩は、人間に対していささか、腹が立ってきた。

吾輩は今まで、ふたりのようなことは一切していないし、これからもしないように気を付けよう。と、自分に言い聞かせていた。

すると、突然、吾輩の右上の方から何者かの声が聞こえてきた。

いつか、どこかで聞いたことがあるような、懐かしい声ではあるが、なぜかその声は悲しそうであった。

何者かの声:あなたは、本当に身体的なことで、相手の心を傷つけたりしたことは、これまで一度もなかったのですか?昔、あなたの首にエアレーションのチューブがからみ、もがき苦しんでいた時、カメ吉がいち早くそのことを奥さんに知らせ、助けてくれましたね。カメ吉はあなたの命の恩人なのですよ。

そんな折、主人が、カメ吉のことを「カメ吉の頭に毛が3本」と言ってからかいました。

その時、あなたは、カメ吉をかばうために、主人に対して何か言いましたか?

(このとき、本当は主人に対して何か文句を言って欲しかった)

カメ吉に、一度も慰めの言葉もかけなかったし、何もしていませんね。

かわいそうに、カメ吉は、とても傷つきやすい性格だったのですよ。

その辛さは、傷つけられた者にしかわからないことです。

それなのに、相手が落ち込んでいる時に、何もしないのは、相手の不幸を陰で喜んで、相手の気持ちを傷つけているのと同じことなのです。

そう言って、何者かの声は遠ざかっていった。

吾輩は、茫然とした。そして、あの時、歯科衛生士さんや先生が、ウイッグがずれていることに気付いていたが、知らないふりをしたとしたら、彼らのとった行動の意味がなんとなくわかったような気がしてきた。

相手が落ち込んでいる時は、そっとしておいてあげるのも、

相手の気持ちを傷つけないことになることを・・・。

それがCompassionというものなのかもしれませんね。

奥さん、御主人、そして、謎の声の持ち主さん、吾輩にこのことを気付かせてくれて、本当にありがとうございました。

 

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【後記】

後日、奥さんは、友達にAさんのことについて聞きました。

すると、友達は、Aさんとは、自分の事だと告白したのです。

この話、実は自虐ネタだったんですよ!

だから、友達は、奥さんが笑ったことに対して、自分が傷つけられたとは思っていなかったようですね。

また、主人がカメ吉に、「頭に毛が3本」と言って、からかっていた時、それを見ていた奥さんは、主人に対して酷く怒り、主人は猛省していたようです。

最後に、あのどこか聞いたことがあるような昔なかしい声の持ち主は、いったい誰かって?

それは、謎は謎のままにしておいた方が良いのかもしれませんね。

 

オバケのQ太郎:ごく普通の家庭に住み着いた、1匹の間の抜けたオバケが引き起こす騒動を面白おかしく描いた藤子流生活ギャグ漫画の原点にして、藤子漫画の代表作の一つ。『オバQ』と省略されて呼ばれることも多い。      

(出典先:Wikipedia

Compassion(思いやり)

:他人の気持ちに配慮し、相手が何を望みどんな気持ちかを注意深く考え、接すること。相手の身になって考えたり、推察して気遣いをしたりすること。(出典先:Oggi