カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第137話 航行の自由作戦

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 今日は、冬にしては温かくとても穏やかな天気だったので、奥さんが吾輩とカメ輔をベランダに出し、水槽の掃除をしてくれた。そして、どういうわけか、奥さんは、すぐ部屋の中に入っていったのである。

吾輩も、ベランダにいるのだからカメ輔のお守りをする必要はないと思い、カメ輔を自由にさせていた。(でも、こんな時に限って、何かが起こるんだよね)

あまりの温かさで気持ちがよくなり、しばらくの間、吾輩はベランダでうたた寝をしていた。

すると、誰かがテレパシーを使って、何かを話している声がどこからともなく聞こえてきた。吾輩はその声が聞える方向に視線を向けた。

すると、そこにはカメ輔がいて、カメ輔の向こう側で、ゴミ袋をあさっている謎の生物がいたのである。

それは、真っ黒で、大きくて、眼光の鋭い生き物、そう、我が天敵、カラス※1だった。

どうして、カラスが天敵かって?

なぜだろう。吾輩の体の中には、カラスを許すことができない遺伝子が組み込まれているようである。

おそらく、吾輩のご先祖様は、カラスから酷い目に合わされたに違いない。それに、主人と奥さんから、「カメ子。散歩をする時は、上空を飛んでいるカラスに注意しろよ」と口を酸っぱくして言われていたのである。

すると、吾輩の視線を感じたカラスは、吾輩に向かってこう言った。

カラス:ああ~ようやく親分がワシのことに気付いてくれたなぁ。親分のお噂は、電線の上から、よく耳にしていましたよ。散歩をしている時は、いつも、大勢の子供達から囲まれて大人気じゃないですか。

それにしても、こいつ(カメ輔)は、大物というか、世間知らずというか?まったく、困ったものだよ。

俺に向って「おじさん、ここは、主人達のお家で、無断で入ってきちゃいけないよ」と説教したんだ。

こいつ、俺様に向かって何を言ってるんだ。この辺りは俺様の縄張りであり、制空権を握っているんだぞ。カラスの世界じゃ、誰の敷地かなんて関係ないさ。

もう少し、子分の教育をしっかりやってくれよ。と、言いたい放題である。

そしてその時、吾輩の心にあることが浮かんだ。

カメ子:もし、ここに主人がいれば、「カメと人間、カラスの関係は、まるで、日本とアメリカ、そして、あのお隣の赤の大国の関係だ」と言うだろうなぁ。それに、カメ輔でさえ、カラスに対して筋を通し、勇気を振り絞って抗議したのだからなぁ。

吾輩にとって初めての体験なので、どう対応すべきか悩んだが、しばらく考えて、ついに決めた。

カメ子:おい、カラス。早く領土の侵入を止めよ。ここは、我が家の領土だ。

すると、これを聞いたカラスは、一瞬びっくりした様子であったが、その後、不敵な笑みを浮かべて言ったのである。

カラス:それは違う。ここは、領空域を握っている俺様のものだ。

予想したとおり、恐るべきカラスである。びくともしない。

そこで、今度は、吾輩の最後の一手を打つことにした。同盟国、アメリカの登場だ。

カメ子:それでも、ゴミ袋をあさると言うのなら、このことを奥さんに言いつけるぞ!

すると、これを聞いたカラスの態度は豹変した。カラスは、愕然とするとともに、生ごみあさりを突然止めた。これには、吾輩も本当に驚いた。

「奥さんに言う」ってことが、これほど効くなんて。

その後、カラスは、吾輩とカメ輔を前にして、先程の傲慢な態度と打って変わって、最期の虚勢を張りながら捨てぜりふを吐いたのだ。

カラス:お~よくも言ってくれたな。でも、これから、外に出る時は、頭上に注意した方が良いよ。

そう言うと、カラスは、外を見上げて飛び立って行ったのである。そして、それを見届けた吾輩は、カメ輔に言った。

カメ子:よくぞ、怪物(カラス)に向かって、ダメなものはダメと、はっきり言ったなぁ。大したものだ。だから、ワシもお前の勇気に倣(なら)って、カラスに言ってやったんだ。

すると、これに対し、カメ輔は答えた。

カメ輔:カメ子兄ちゃん、どうもありがとう。(でも、僕は、本当はカラスの怖さを知らなかったんだ。もし、知っていたとしたら、怖くて言えなかったかもしれない。それに、カラスとカメ子兄ちゃんが話しをしている間、僕の足は震えていたんだ)

 

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【後記】

 カラスは、どうして、奥さんの名前を出した時、愕然としたのでしょうか?

実は、少し前カラスがベランダに侵入し、ゴミ出しの準備の為置いていたゴミ袋をあさっていたのです。

そして、それを見つけた奥さんは、箒を振り上げ、カラスを追っ払ったのです。

もしかして、その時のカラスが今回と同じカラスだったかもしれませんね!

なお、この事件以来、我が家の周辺には、カラスの群れが頻繁にやって来るようになったそうです。これも、あのカラスが仲間を呼び寄せてきたかもしれませんね。

でも、カメ子とカメ輔はこれぐらいのことでは負けません。

お散歩の時には、これにひるむことなく、奥さんや主人と合同で「航行の自由作戦」を展開していくことになるでしょう。

カラス※1 : ハシブトガラスの場合、翼長は32–39cm。

 鳥類の中で、最も知能が発達しているとされ、ある程度の社会性を持っており、鳴き声による意思の疎通を行っている。遊戯行動(電線にぶら下がる、滑り台で滑る、雪の斜面を仰向けで滑り降りるなど)をとることも観察されている。4色型色覚を識別でき、人間と同じRGBに加えて紫外線も識別できる。人間の個体を区別して認識することができる生き物である。

【出典: フリー百科事典】

航行の自由作戦※2:1979年よりアメリカ合衆国は、他国が領海や排他的経済水域といった海洋権益を過剰に主張していると判断した場合、その主張を認めないという意思表示をするため事前通告なくその海域を航行するという「航行の自由」作戦(FONOP: Freedom Of Navigation OPeration)を実施している。この作戦によりアメリカの軍艦が事前許可なく南シナ海を航行することに中国は反発している。

【出典: フリー百科事典】