カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第146話 桜吹雪

 

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🌸桜吹雪の中を探検しているカメ輔です。

 

 今日は、朝からなんだかウキウキしている。

えっ、いったいどうしてかって?

それは、昨夜、主人と奥さんの話しを聞いたからだ。

話しの内容は、吾輩とカメ輔を近くの公園に連れて行ってくれるという内容だった。

そして、とうとうその時がやってきた。

お昼過ぎ主人が、吾輩とカメ輔を別々のバスケットに入れて車に乗せ、

奥さんが車に乗り込むと、すぐに発車した。

バスケットの中で少しガタガタ揺れたが、10分ぐらいで目的地の公園に到着した。

そして、車から降ろされ、透明なバスケットの中から見える風景は、いつかどこかで見たことがあるような景色だった。

そこは、広いグラウンドで、その周りにある木々には綺麗なピンク色の花が咲き乱れ、

その花びらは、風が吹くと乱舞していた。

主人と奥さんは、グラウンドの横の椅子に荷物を置いた後、吾輩とカメ輔を広場の別々の場所に運んだ。

そして、なぜか?一度、椅子のところに戻り、再び、吾輩とカメ輔がいる所にやって来たのである。(なしか?)

それから10分ぐらい経ったであろうか、見知らぬ年輩の男女二人がカメ輔に近づいて来た。

すると、男性がカメ輔を見ながら言った。

男性:広場にカメがいるなんて珍しい。こんなに近くで、本物のカメを見るなんて久しぶりだ。このカメは何という種類?どこの川からやって来たの?と、質問をしてきた。

すると、カメ輔の近くにいた主人が、「名前はカメ輔と言って、家(うち)で飼っているんですよ。種類はニホンイシガメで、日本固有の在来種で準絶滅危惧種のカメなんです」と答えた。

それに対し、男性は、何を言っているのかよくわからない様子で、ポカーンとしていた。

そして、今度は、女性が二人の会話に入って来た。

女性:こんなお花見日和に縁起の良いカメさんに出会えるなんて、おめでたいことじゃないの。写真を撮影して奥さんに見せてあげたら。

と、言った。

すると、さっそく男性は、主人に了解をとり、カメ輔の動画をスマホで撮り始めた。

そして、撮影が終わると、こう言った。

男性:来年の花見には、縁起の良いカメさんに、会えるかどうかわからないなぁ。

良い冥途の土産になったよ。

(カメ輔に向かって)カメ輔くん。ありがとう。この動画は妻に見せて、縁起物として大事に取って置くからね。

「カメが縁起物」だと言われて有頂天になっているときに、吾輩はある言葉に反応したのである。

カメ子:えっ、花見。この言葉は、いつかどこかで聞いたことがある言葉だなぁ。

もしかして、いま、綺麗に咲いているピンク色の花は桜の花かもしれない?

あっ、思い出した。

ここは、昔、吾輩がお花見をした場所だったんだ。

でも、その時いったいどんなことがあったのか思い出せないなぁ。ああ、情けない。

すると、暗い顔をして困っている吾輩を見かねた奥さんから、痛快な話しが飛び出してきたのである。

奥さん:カメ子。もう、そろそろ思い出した?

あなたは6年ぐらい前、ここにお花見で来たことがあるのよ。

その時、鳩の「鳩吉」に会ったわね。

吾輩は、「鳩吉」という言葉を聞いて、思い出した。

「鳩吉」は、吾輩の「刎頸(ふんけい)の友」だ。

「刎頸(ふんけい)の友」でありながら、すっかり忘れていた自分が恥ずかしい。

しばらくの間、あの時のことを思い出していると、ある疑問が生じてきた。

あの時、鳩吉とは、「また会おうなぁ」と、約束をして別れたが、今日、彼の姿はまだ、見ていない。何かあったのかなぁ?

再び吾輩の顔が暗くなると、主人がカメ輔を手で掴んでこっちにやってきて、吾輩の横に置いたのである。

すると、吾輩は鳩吉のことを忘れ、カメ輔に対する対抗心がメラメラと湧き上がってきたのである。

カメにとって、「前人未踏の探検」は心が浮き立つのである。

そして、吾輩は、カメ輔の前に割り込み、カメ輔を手で押しのけ、「桜吹雪」の前方に広がる花の絨毯(じゅうたん)をノッシ、ノッシと前進したのである。

そして、それを見ていた奥さんは、半ば呆れ顔で言った。

奥さん:まぁ~カメ子は相変わらず負けず嫌いの吾人ね。

昔からちっとも変わってないわ。

もちろん、吾輩は、奥さんの戯言(たわごと)をいちいち気にしている暇はないので、未知の世界をただひたすら突き進んでいた。

一方、カメ輔も、吾輩と違った方向に舵を切って、ゆうゆうと歩んでいた。

すると、吾輩は、自分が進みたい方向とは違う所に、人間の足があるのに気が付いた。

足元まで行き、上を見上げると、主人の顔があった。

吾輩は、「さて、どうするか?このまま、主人を見なかったことにして、前進すべきか?いや、仁義を尽くして挨拶しておこうか?」と一旦立ち止まって考えたが、しばらくして、吾輩は主人のいる方向に行くことにした。

そして、吾輩が主人の足元まで近づいて来た時、主人からびっくりするような言葉が飛び出したのである。

主人:お~い、カメ子。よく、ワシの所まで来てくれた。やっぱり、カメ子は律義だなぁ。それに比べてカメ輔はなんだ。ワシの方に近づいても来ない。ただ、あらぬ方向に進んでいるだけだ。こんなにカメ輔のことを世話してきたのに。ああ、情けない。

カメ輔は相変わらず、世間知らずのカメだな。

すると、それを聞いていた奥さんが、間髪入れず、吠えたのである。

奥さん:だってしょうがないじゃない。カメ輔は、まだ4歳で、世間の義理人情なんてわからないのよ。

奥さんは、どうも吾輩には厳しく、カメ輔には優しいようである。

一方、主人は、カメ輔には厳しく、吾輩には優しい。なしか?

それにしても、お腹が空いた。

お弁当はまだかなぁ?

 

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【後記】

 カメ子が心配していた鳩吉のことについて、ご報告致します。

鳩吉がこの日、姿を見せなかったのは、主人と奥さんが鳩吉にあげる

パンを持ってくるのを忘れたからです。

一方、主人と奥さんは、ちゃっかり自分達が食べるお弁当を持って来て、

椅子に座って食べていたとのことです。

読者の皆様、どうか、このことはカメ子とカメ輔には絶対内緒にしてくださいね!

どうぞよろしくお願い致します。

 

:詳細については、【カメのひとりごと】の本《素敵な出会い》を

   参照してください。