カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第131話 お見合い

 

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 主人は、吾輩をチラチラ見ながら、奥さんと何かを話している。たぶん、また、吾輩の噂話をしているのだろう。

聞きたいような、聞きたくないような気持ちだが、やっぱり聞くことにしよう。

主人:ワシ(主人)の知人が先日亡くなったんだよ。その人は、カメ子にとって、最初で最後の見合いの話を持って来てくれたあの人だよ。ああ~あれから、7年ぐらい経つかなぁ?あの時のことを思い出すと、「カメ子に悪いことをしてしまった」と今でも後悔している。ワシと知人の連絡が上手くいかず、見合い話がご破算になってしまったことだ。

ある日、知人は、近くの川で野生の雌のイシガメを見つけ、カメ子のことを気にかけてくれ、連絡をしてくれた。

それで、ワシは、早速そのカメさんを見に行った。

すると、そのカメさんは、カメ子より一回り大きく、ちょっと鼻ペチャだった。その知人は、カメさんと会話ができるようで、ワシが来る前にカメ子との見合いについて、気持ちを聞いてみたらしい。

すると、カメさんが言った。

カメさん:人間に飼育されているということは、蛇やモグラから卵を狙われたり、アライグマやイノシシから襲われることもないし、洪水で海に流されることもないということね。三食昼寝付きも良いかもしれないわ。

でも、プライバシーなしの狭い空間で、私が生活していけるのか、自信がないわ。

それに、お見合いの相手は、生まれた時から人間に育てられた「ひよっこ」なんて、なんだか頼りなさそうね(ムカッとすることを言われてしまった)

この話を聞き、ワシは、お見合いの話しを進めて良いのか、断ったほうが良いのか、決断ができなかった。

そこで、「カメ子の気持ちを聞いてみます」ということで、その時は、そのまま別れた。

その後、どうしたらいいかと思い悩んだ末、お前(奥さん)とも相談して、カメ子に話しをした。

でも、カメ子は、突然聞いた話しで、びっくりしたのか、目をクリクリして、何も答えなかった。

そこで、ワシは、カメ子に一つ一つ諭しながら聞いてみた。「相手と話しを合わせることができるか?相性が合わず、喧嘩になったら大変だぞ。そもそも、お前は、結婚する気があるのか?」等の質問をしたが、カメ子からの返答は何もなかった。

月日はどんどん過ぎていき、ワシは知人になんと返事をしたら良いだろう?と思い悩んでいた。そして、カメ子の性格と相手方の将来を考え、ワシが悪者になり、嫌われるのを覚悟で言うことに決めた。

「カメ子は、面食いで、鼻ペチャな女性に興味がないようなので、今回はご縁がなかったです」と、すると、しばらくしてから、知人からTELがあった。

この後の話は、初めてお前(奥さん)やカメ子に話す内容だが、知人は、そっと、カメさんに聞いてみたそうだ。そしたら、そのカメさんは、はっきりと言ったそうだ。

カメさん:あの時はまだ、逢ってみようか、心が決まっていなかったの。でも、相手が断ってきたのだから仕方ないわね。

あの時、吾輩は、「了解なしに、勝手にお見合いを断るなんて、ひどい」と思った。

でも、「もし、お見合いして結婚し、その後、主人が恐れていたとおり、相手と性格が合わず、噛みつき合うことになっていたら」と今、思うと、お見合いをしなくて良かったのかもしれない。

でも、そうは言っても、彼女と一度は逢ってみたかったなぁ。

鼻ペチャでも愛嬌のあるかわいい顔だったかもしれないしね。

カメも人間と同様で、男の方が、7年経った今でも過去を引きずり女々しいのである。

 

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:第15話 結婚(未掲載)