カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第132話 命の恩人

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 今回の話は、僕、カメ輔がナビゲーターとなって進めていきたいと思うが、読者の皆様、いいかぇ。(大分の方言で、いいですか?という意味)

最近、朝晩めっきり冷え込むようになり、日中でも寒い日が続いていますが、読者の皆様、いかがお過ごしですか?

ある日の午後、奥さんが僕をベランダに出し、歯ブラシで身体をゴシゴシ洗い、その後、水槽の掃除も行ってくれた。

僕は、その間、ベランダで一人、束の間の休息を楽しんでいた。と、その時、どこからともなく女性の声が聞こえてきたのである。

その声は、どこか聞き覚えのある声で、「あんた、どこ見てんのよ?」と言っているように聞こえた。

しかし、キョロキョロ周りを見渡してもどこから聞こえてくるのかいっこうにわからない。そして、目線を何気なく上の方にあげてみると、その声は、僕の前方の植木鉢から聞こえてきているようだった。

でも、そこには、みすぼらしい、華がない植物が置かれているだけだった。

すると、その植物は、「まだ、私がわからないの?ユッカよ」と、答えが返ってきたのである。

僕は、一瞬、「ユッカって誰?」と思ったが、しばらくして、いつぞやのユッカ姉さんだとわかった。

そして、「ユッカ姉さん」と呼んだ。

でも、その声は、以前のユッカ姉さんと比べ、どこか元気がなさそうだと思った。さらに、その姿は、緑の葉っぱの中に、白髪交じりの赤茶けた葉が混じっていて、やつれたように感じた。そんな折、昔を思い出し始めた僕を見て、ユッカ姉さんが、意外なことを喋り始めたのである。

ユッカ:相変わらず、「みすぼらしくて、華がない植物」なんて、一言多いんだよ。(なぜか、生物の間では、相手と心が通じるテレパシーが存在しているようである)

まあ、それはそれとして、あなたに、ひとつ言っておきたいことがあるのよ。

カメ輔君、つい先日、奥さんと主人、そして、カメ子兄さんが何かを話していたのをあなたも知っているわね。

そう、カメ子兄ちゃんのお見合いの話だよ。

ベランダの私にも聞こえていたわ。

あなたも、ショックだったよね!だって、あなたには、お見合いの話なんて、全く来ないし。

一人除け者のように感じている貴方の気持ちが、本当によくわかるわ。

僕は、ユッカ姉さんの話を聞き、しばらく考えて言った。

カメ輔:ユッカ姉さんは、相変わらず人が触れられたくない所をえぐるなんて、今も昔も変わってないね。

あの時も、僕は隣の水槽でじっと聞いていたよ。

僕にとって、初めて聞く話で、正直びっくりした。

「カメ子兄ちゃんも、色々苦労したんだね」そう思って、カメ子兄ちゃんに同情したんだ。その一方で、僕一人が置いてけぼりにされたようで、悲しい気持ちにもなったよ。

すると、今度は、ユッカ姉さんが即座に答えた。

ユッカ:でも、気にしないでいいのよ。カメ子はカメ子。カメ輔はカメ輔よ。

ユッカ姉さんは、僕を励まそうとしてくれているようで、ひとまず、「ありがとう」と言った。

そして、先程から気になっていた、ユッカ姉さんの体調のことについて聞いてみた。

すると、ユッカ姉さんからとんでもない言葉が飛び出してきたのである。

ユッカ:カメ輔君、心配してくれて、どうもありがとう。実は、ここ1週間ぐらい前から、ここに置かれているのよ。それ以来、体調がすぐれなくて、時々、寒気がするのよ。寒さのせいで、見てのとおり、葉っぱが枯れそうなのよ。

僕は、驚愕した。そして、「何とかしなくては、このままでは、ユッカ姉さんは死んでしまう」と思った。

そして、「このことを、すぐに奥さんや主人に知らせなくちゃいけない」と思った。

そこで、僕は、ある行動をとった。

ユッカ姉さんのいる、植木鉢のところまで全速力で走り出したのである。すると、僕の横で、水槽の掃除をしていた奥さんが、僕の突然の行動に気付いた。そして、今度は、僕の上の方にいる、ユッカ姉さんを見たのである。

そして、奥さんは、しばらくユッカ姉さんの様子を見て言った。

奥さん:あっ、しまった。ユッカを家の中に入れるのを忘れていた。ユッカが枯れそうだわ。さぞかし、寒かったでしょうね。

僕は、「忘れていたとは、何ということだ、けしからん」と思った。奥さんは、早速、ユッカを部屋の中に入れ、部屋の中にいる、主人に向かって、いきさつを話した。

そして、びっくり仰天発言をしたのである。

奥さん:ああ~早く気が付いて良かった。私のミスで、ユッカちゃんが枯れて死にそうだった。そして、このことを教えてくれたのが、あのカメ輔だったのよ。

僕は、奥さんの一言を聞き、舞い上がるような気持ちになり、とてもうれしかった。

でも、僕が感慨に浸っている中、今度は、主人の口から、意外な言葉が飛び出したのである。

主人:カメ輔は、偶然にせよ(偶然じゃないよ)、ユッカを助けてくれたんだね。お手柄らだな。カメ輔は、ただの無芸大食じゃなかったんだ。カメ輔は、ひょっとしたら、我々には未だ見せたことがない素晴らしいものを持っているのかもしれないよ。

そして、その時、部屋に入れてもらったユッカ姉さんから、テレパシーが飛んできたのである。

ユッカ:ご主人の言葉なんて、気にしない。気にしない。貴方の素晴らしさは、私が一番知っているわよ。

そして、最後にユッカ姉さんから僕にとって、忘れられない感激の一言があった。

ユッカ:貴方は、私の命の恩人ね。

 

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【後記】この出来事の後、奥さんは、ユッカの枯れた葉を綺麗にし、今は光輝くユッカ姉さんに戻りました。

ところで、ユッカ姉さんは、日頃、カメ輔にめったに声をかけないのに、どうして、この日だけ声をかけたのか?未だに、ユッカには聞いていません。

それは、ユッカ姉さんだけにしかわからない、永遠の謎です。

でも、その謎は謎のままが良いのかもしれませんね。

※1:第57 話 ユッカ(未掲載)

   ユッカとは、リュウゼツラン科イトラン属の植物の総称。

※2:第113話 朋あり遠方より来るPart1(掲載)

※3:第114話 朋あり遠方より来るPart2(掲載)

※4 :第131話 お見合い(掲載)