カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第91話 運命が変わる日(Part 2)

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  車のエンジン音が止まった。どうやら目的地

に到着したようである。

車の中から「育ての親の邸宅?」らしき家が

見えた。

さっそく、誰なのかよくわからない謎の女性

が、車を飛び降りて家の中へ入って行った。

そして、主人は、吾輩が入ったバスケットを

持ち車外に出た。

バスケットの中から見る景色は、感無量で

あった。

黄色く実り、頭(こうべ)を垂れた稲穂が

眼下に広がっている。

主人は、前方にある小さな池に向かって

進んで行った。

そして、主人は、「カメ子。ここは、

カメ輔が生まれた場所だぞ。よく観ておけ

よ」と言ったのだ。

吾輩は、「よく観ておけよ」と言ったって、

吾輩はここからすぐ近くの温泉施設で生ま

れたんだぞ。こことは関係ないよ」と思っ

た。

そして、主人は吾輩をバスケットからそっ

と取り出し、池の様子が見えるようにして

くれた。

池には2匹のニホンイシガメがおり、こち

らをじっと観察している。

その風体や上目づかいで見る警戒心丸出し

の様子が、どこか似ている。

「さもありなん。だって、吾輩の兄弟だか

らな。歳も同じ位だろうか?」

そして、主人がちょっと身体を動かすと、

2匹のうち、1匹のニホンイシガメが急に

池の中に飛び込んだ。

ところが、1匹はボーっとして全く動こう

とはしないのである。

吾輩より肝がすわっているなぁ?と思って

いると、主人が、ぽつりとつぶやいた。

主人:カメ子、あれは、本当のカメでは

なく本物そっくりの※1彫塑(ちょうそ)

なんだよ。

プロの彫塑家で、お前の育ての親でもあ

る、Aさんが作った置き物だ。

ワシもはじめは、間違いそうになった。

お互い、自分の人生の中で、あの前人

未踏69連勝の大記録を持つ大横綱

双葉山が言った

「ワレ、イマダモッケイタリエズ

※2我、未だ木鶏たりえず)」の境地

になりたいもんだな。

吾輩は、「また、主人が分けのわから

ないことを言い始めた」と思った。

主人と吾輩は、育ての親の家の中に入

った。

すると、そこには、車に同乗していた

謎の女性と知らない男性が立ち話をし

ていたのである。それを見ていた主人

は、すばやくその男性に近づき、話し

を始めたのだった。

そして、バスケットの中に入っている

吾輩に向かって言った。

主人:おいカメ子。この方が、お前の

育ての親のAさんだよ。ご挨拶しなさい。

それを聞き、吾輩の心はにわかに色めき

立った。

Aさんは、バスケットの中にいる吾輩を

覗き込んで言った。

Aさん:お~。君が(カメのひとりごと)

の本の中に出てくる、ハンサムなカメ子

さんか。確かに男前だし、本の中で大活

躍しているね。

どうやら、Aさんは、既にこの本を読ん

でいて、本の内容をよく知っているよう

だ。さすが、奥さんは用意周到だ。

こんなことは、主人にできるはずがない。

でも、その奥さんがいない。

さて、どこにいるのやら?

まあ、いいか。さあ~話しを続けよう。

吾輩をじっと見つめているAさんの顔を見

て、吾輩も一度もまばたきをせず、

フリーズ状態であった。

すると、吾輩の目から、突然、一粒の涙が

こぼれてきた。

 カメ子:この方が、カメの塑像を使った人

なのかなぁ?

そして、この方がいなければ、吾輩は生ま

れてこなかったし、命の恩人だ。

今日は、失礼がないようにドレスアップ

(奥さんが、いつもより丁寧に甲羅のお掃

除をしていただけだが。)

してまいりました。と心の中で呟いた。

主人は、吾輩が入っているバスケットを

部屋の肩隅に置いた。バスケットの横には、

大きな透明の水槽2基が置かれていた。

その時、隣の水槽から、カメ輔と同じよう

な匂いと、何処かで聞いたことがあるよう

な音「キュッ。キュッ。シュッ。シュッ」

という音が聞こえてきたのだ。

そして、主人は、「おい、カメ子。この小

さいカメ達は、お前の兄弟だぞ。挨拶して

おけよ。色々話すこともあるだろう。」と

言い残し、Aさんと謎の女性との会話に加わ

ったのだ。

そこに残された吾輩は「さて、何の話しを

しようか?」と思った。

カメ子:(顎の関節を鳴らし)カリッ。

カリッ。カリッ。(おい、わかるか。

お前たちのお兄さんだぞ)

すると、           

カメ達:(気道を震わせる警戒音で)

キュッ。キュッ。シュッ。シュッ 

(キャ~、怖いよ、誰だ? 大変だ、

大変だ、○×○×○ )

カメ子:カリッ。カリッ。カリッ。

カリッ。

聖徳太子は一度に7人の話しを聞

き分けることができた。というが、

20匹が一斉に話しをしているので、

吾輩には、何を言っているのかさっ

ぱりわからないよ~)

しばらくして、主人達3人の打ち合

わせも終わったようである。

でも、いったい、何の打ち合わせな

んだろう?

ちょうどその時、家の外で、車が止

まり、2人の男性が家の中に入って

きたのである。

その2人の男性は「〇〇〇です。

今日は、どうぞよろしくお願いしま

す。」と言った。

なぜ、吾輩がAさんと会うことになっ

たのか?

さらに、この出来事が「吾輩の運命

が変わる日」といったいどんな関係

があるのか?

次回の「運命が変わる日 Part3」

でその真相が明らかに・・・。

乞う御期待!

 

※1 彫刻塑造 (そぞう) 

    また、その作品。

※2 木鶏(もっけい)とは、

   荘子(達生篇)に収められ

   ている故事に由来する言葉

   で、木彫りの鶏のように全

   く動じない闘鶏における最

   強の状態をさす。

   また、木鶏という言葉は、

   スポーツ選手に使用される

   ことが多く、特に日本の格

   闘技(相撲・剣道・柔道)

   選手が好んで使用する。

   横綱双葉山は、連勝が69で

   止まった時、「ワレイマダ

   モッケイタリエズ

  (我、未だ木鶏たりえず)」と

   安岡正篤に打電したという

   エピソードがある。

   これを踏まえて横綱白鵬は、

   連勝が63で止まった時に支度

   部屋で「いまだ木鶏たりえず、

   だな」と語った。

   出典: フリー百科事典

   ウィキペディアWikipedia

   

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