カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第86話 不純な心

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 ああ、今日も暑い1日の始まりだ。

老体(8才で?)は、暑さに弱い。

でも、今日はいつもの吾輩とは違う。

心をうきうきさせながら、あることを期待していた。

というのは、主人と奥さんが良い話をしているのを聞いて

しまったからだ。

それは、近々主人の家のお墓参りに行くという話だった。

その話を聞いて、吾輩は「やった」と思った。

もしかしたら、今日がその日かもしれない。

いつもは、吾輩より遅く目覚める奥さんが、今朝は早くから起きていて、

家の中をうろうろしているのだ。

これは、きっと、何かあるぞ!と思っていると、主人が吾輩の方にやって

来て「おい、カメ子。水替えをするぞ。そして、身体をゴシゴシ磨いて

あげるからな」と言った。

それを聞いた吾輩は「ついに、そのときが来たな」と思った。着々と、

ことが進んでいて筋書き通りの展開だ。

「なぜ?」って、決まっているじゃないか。

身体をゴシゴシされるということは、お墓参りに行くので身体を清める

っていうことだ。

主人は、吾輩をトングで掴みバケッに入れ、ベランダの床の上に下ろした

のだった。

早速、主人はペットボトルに水を入れ、その水を吾輩の甲羅にかけながら、

歯ブラシでゴシゴシと擦り始めた。

ちょっと、甲羅がむずがゆいが、それが実に快感なのだ。

吾輩のゴシゴシが終わったら、今度はカメ輔の番だ。

相変わらず、カメ輔は落ち着きがなく、のたうち回っている。

カメ輔のゴシゴシが終了した後、主人は水槽の水洗いを始めた。

その間、吾輩とカメ輔は、久しぶりに、にらめっこをして遊んでいた。

そして、吾輩とカメ輔はアゴを鳴らしながら会話を始めた。

吾輩:カリッ。カリッ。カリッ。カリッ。

(おい、カメ輔、久しぶりだな。元気にしているか?今日は、

幸せなことが起きるかもしれないよ。楽しみにしていなよ)

すると、カメ輔は相変わらず、脳天気で、

カメ輔:ふう~ん。そうなの。と答えた。

水槽の掃除が終了し、主人は、吾輩とカメ輔をトングで掴み、

水槽の中に入れ、そして、意外な行動をとった。

何と、水槽の中に水を注ぎはじめたのだ。

「えっ、どうして?これから吾輩達をお墓参りに連れて行って

くれるんでしょ。水槽に水を入れてどうするの?」

主人の不可解な行動は続き、今度は、吾輩と水が入った水槽を、

主人と奥さんで持ち上げ、どこかへ運ぼうとしたのだった。

そして、水槽を下ろした所は、吾輩が未だかつて踏み入れたことの

ない未踏の地であった。

「一体、ここで何をするの?」吾輩は首をかしげ、主人の言葉に、

愕然とした。

主人:いいか。カメ子。わしらはお墓参りに行ってくる。

しっかり留守番をしていてくれよ。ここなら、ヒンヤリして、

クーラーがなくても気持ちが良いし、(吾輩:相変わらずケチだな)

家の仏様の前で祈っていなさい。

と言ったのだった。

吾輩:え~。吾輩は留守番か?朝、奥さん達が話をしていたときから、

ずっとお墓参りに行けるのを楽しみにしていたのに、なんてこった。

吾輩は、横の水槽にいるカメ輔に向かって、話しかけた。

吾輩:おいカメ輔。こういうこっちゃ。一緒にお墓参りに行けると

思ったのに、期待させてすまんな。

すると、カメ輔は、

カメ輔:うん、いいよ。毎度のことだもの。

と答えた。

カメ輔にとって、お墓参りなんてどうでも良かったのだ。

(カメ輔はお墓参りに、まったく興味がなかったのである。)

吾輩はしばらくの間、頭の中が真っ白であった。

そして、ふと我に返り、気が付くとまた、新たな疑問が生じたのである。

吾輩:それにしても、ここはどこだ?ちょっと暗いが、涼しくて何だか

心が落ちつく所だな。

そして、最後に主人が言ったことばを思い出した。

「家の仏様の前で祈っていなさい」

とすると、水槽の向こう側には、小さいが荘厳さを漂わせる箱らしきもの

がある。もしかして、あれが仏壇というものか?今は扉を閉じているが、

その中には仏様が入っているのかも知れないな。吾輩は、先ほど主人が

言っていたことを思い出し、仏様に向かって手と手を合わせて?合掌した

のだった。しばらく仏壇に向かって祈っていると、いろいろな声がはっきり

と聞こえてきた。

お墓参りに連れていってもらえなかったのは、仏様が吾輩の不純な心に

対して罰を与えたのかもしれない。

吾輩のお墓参りは、ご先祖様に感謝を込めてということではなく、お墓参り

のついでに、ドライブを楽しむつもりだった。

今から思うと、お墓参りに行けなかったことが、かえって良かったのかも

しれない。もし、お墓参りに行っていたら、新型コロナに感染するかも

しれないし、車のドライブで、吾輩は、何時間も小さいバケッの中で揺れる

羽目になり、車酔いしていたかもしれない。いろいろ考えていると、清々しい

気持ちになってきた。これも、仏様のお導きで、ご先祖様と心が通じたのかも

しれないな。お墓参りにも行かず「不要不急の外出?」を避けるといった政府

新型コロナウイルス対策にも協力しているし、吾輩は、なんて良い国民?

なんだろう。

今日はカメ輔と一緒に、いつ帰ってくるかわからない主人達をじっと待って

いることにしよう。

でも、そろそろお腹がすいてきた。

ご主人様、早く帰ってきてくれよ! 次回も、おもしろいよ!乞うご期待!

                    

     プロローグから第84話までは、「かめのひとりごと2」

        https://iamkameko2.hatenablogs.jp/ 

        に掲載していきますので、お楽しみに!

                      

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