カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第87話 我が人生で一番恥ずかしい思い出

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  最近、主人は、吾輩たちを散歩に連れて行ってくれない。

何やらSNSとかをやっているらしく、吾輩たちにかまっている

暇がないらしい。

いささか、人間たちに対する不満が鬱積(うっせき)している。

こうなりゃ、主人が好きな吾輩のパフオーマンスもやらないよ!

今日も、吾輩が楽しみにしている、主人たちの会話が始まった。

だって、良きにつけ悪しきにつけ、人間社会を知る良い機会に

なるんだもん。まず、主人がその口火を切った。

主人:この前、SNSを見ていたら、カメが主人の布団の中で、

おねしょをして、布団のシーツが濡れている映像があった。

そして、それがバレたと思ったカメは、一目散に部屋の隅まで

逃げて行った画像があったよ。画像のテロップは「反省」だったかな。

カメも反省するのかな?反省しないから、犬畜生になったのかなぁ?

吾輩:吾輩はカメで、犬畜生じゃない。失礼なことを言うなぁ。

反省ぐらいするさ。

吾輩は一瞬、主人の言うことにムカッとしたが、その気持ちを

落ち着かせて聞いていた。

すると、吾輩のことについて語り始めた。

何だか、ヤバイことになりそうだ。

主人:ところで、カメ子はどこかで小便をしかぶったことが

なかったかなぁ?

すると、奥さんは、間髪入れずに答えた。

奥さん:忘れたの?あれは、6年ぐらい前だったかしら?

カメ子の公園デビューのとき、あなたがいたずらをして、

カメ子を滑り台の中ほどに置いたじゃないの。

滑り落ちないように、必死に前足で踏ん張っていたカメ子も、

次第に、ズルズルと滑り落ちてしまい、途中でおしっこを

漏らしてしまったじゃないの。

カメは、上に這い上るのは得意だけれど、下に降りるのは苦手なので、

さぞかし怖かったんだと思うわ。

吾輩:ああ~吾輩の思い出したくない過去についに触れられ

てしまった。我が人生で一番恥ずかしい思い出だ。

隣の水槽にいるカメ輔に、この話しを聞かれるとヤバイことになるなぁ。

吾輩はカメ輔の前では、強い兄貴でとおっているのに面目丸つぶれだ。

今度、カメ輔に会っとき、いったいどんな顔をすれば良いのだ。

吾輩が落ち込んでいると、今度は主人が意外な言葉を発した。

主人:そうだった。そんなことがあったなぁ。

でも、それからカメ子を水槽から出して、部屋の中を徘徊させても、

おしっこをしかぶることはなかったよ。

(カメ子:ご主人様、ヤバイよ。そんな事、奥さんの前で言っていいの?

吾輩が、家の中を徘徊するのは、御法度じゃなかったの?

あとで、奥さんからお目玉をくらってもしらないよ!)

もしかして、カメ子は、「滑り台の、しかぶり事件」を反省して、

それからずっと、家の中の床ではおしっこを我慢していたのかな。

昔、わしの実家で、柴犬のタマ(雌犬、血統書付きだぞ)を飼っていた。

わしが車の後部座席にタマを乗せドライブに連れて行き、

あるホームセンターに立ち寄った。

そして、そこに、陳列してあった犬小屋の中にタマを入れ、鍵を閉め、

タマに向かって「バイ。バイ。」と言って立ち去ろうとした。

その時、タマは、捨てられると思ったのか?わしを、悲しい目で見つめ

「クーン、クーン」と泣いていた。

それを見たわしは、かわいそうになり、慌ててタマを犬小屋から出した。

そして家に連れて帰り、後部座席にいるタマを車外に出そうとしたとき、

ソファーの上にウンチが転がっていた。

タマは、怖さのあまり脱糞してしまったのだ。

いや、脱糞しただけではなく、タマは自分のウンチを食べてしまったのだ。

タマは、人間から捨てられると思い、そのショックで脱糞してしまったの

かもしれない。そして、やってはいけない所で脱糞したことに気づき、

反省をして食べたのかもしれない。

タマは、とても、頭が良く賢い犬だったからなぁ。

しばらくして、奥さんは言った。

奥さん:そうね。利口な動物は、人間と同じように反省した

り、人間が嫌がることが何かということが良くわかっていて、

嫌がることはしないのよ。カメ子もそうかもしれないね。

それにしても、カメ子を部屋の中で歩かせたらだめじゃないの。

罰として、今日のあなたの夕飯は抜き!

(カメ子:とほほ。思った通りだ。でも、奥さんは本気で

は、ご立腹してないようだ。吾輩の家の中での徘徊は、

奥さんも暗黙の了解なのかもしれない。それもこれも、今まで吾輩が、

部屋の中ではおしっこをしかぶらなかった賜物(たまもの)なのだ。

もしも、一度でも床の上でしかぶっていれば、たった、一度のメシ抜き

ぐらいではすまない。

主人は遠島(えんとう)、吾輩はおちんちんを切られるであろうな。

(おお~恐わ~)

そして、最後にいつものパターンで吾輩とカメ輔の品定めが始まった。

主人:カメ子は水槽の水の中では、食事をしながらウンチをして、

辺りに蹴飛ばす。まったく、行儀作法はなっとらん。

でも、おしっこやウンチをしてはいけない所では絶対にしない。

ウンチとおしっこのTPOをしっかりわきまえている。

ところが、どうだ。カメ輔にはそれができない。気にもしていない。

したくなったら分別無くどこでもする。たとえ家の中の床の上でも

(カメ子:えっ、そんなことがあったの?そんなこと奥さんの目の前で

言ってもいいの。ダメ出しだよ)

今回、ご主人様は、カメ輔を標的にしているようだ。

これで、吾輩がカメ輔と会っても「さすが兄貴」と、

いつものとおりリスペクト(尊敬)するだろうな。ひと安心だ。

 

山口県の方言:大小便を漏らすこと。

 

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