カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第147話 リアリスト

 

 昨日、吾輩はカメ輔と一緒にベランダで遊んでいた。

すると、突然上空から謎の鳥が飛来し、吾輩の近くに降り立った。

からして、あのにっくきカラスではないようだ。

いったい何の鳥だろう?と思ったが、それは、いつかどこかで見たことがある鳥だった。

でも、その鳥がいったい何の鳥なのか?は思い出せない。

すると、その中の1羽が吾輩の方にやって来て、言った。

鳥:おいおい。俺だよ。スズメのスズ吉だよ。忘れちゃったのかい?

以前、俺は「あんたは良いよな。何の苦労もなしに、人間から食べ物がもらえて」と言ってからかったなぁ。ごめんよ。

その言葉に対し、吾輩は、(しばらく間をおいて)「あっ、そうだ。思い出した。あの時のスズ吉だ。」と答えた。

(ようやくその時の記憶が戻ってきた)

「ところで、今日は何しに来たの?」と核心を衝くと、スズ吉は、意味深な発言をした。

スズ吉:いや~ようやく春になったし、今日から、挨拶回りを始めたんだ。ところが、同じ仲間やカラスの有力者に挨拶に行ったが、いろいろと忙しいのだろう、皆留守だった。

温室育ちの君にはわからないとは思うが、ここ2年ほど前から、この辺りのゴミ置き場に出しているゴミ袋に残飯がたくさん入っていて、多くのカラスがそれをあさっているよ。もちろん、俺もその周りでご相伴にあずかっているので、助かっているがね。

ところで、今日は、ここに美味しい食べ物があるらしいとの情報を入手し、挨拶がてら、たくさんの仲間を連れてやって来たんだ。

(カメ子:はて、ここには美味しい食べ物が、あったかなぁ?)

と言うと、スズ吉は、しばらく辺りを見渡し、ちょっぴり悲しげで、悔しそうな顔をして言ったのである。

スズ吉:残念ながら、それらしきものは見つからなかった。でも、君に挨拶が出来たし、この辺りでおいとまするよ。

さあ、次は、この辺りの大御所といわれているトンビへの挨拶回りだ。

次回は、是非、美味しい食べ物を用意しておいてくれよ!

と言い残し、スズメ達は東の空に飛び立って行ったのである。

すると、その様子を、部屋の中から見ていた主人が、傍にいる奥さんに向かって囁いたのである。

主人:おいおい。たくさんのスズメ達が来て、ベランダで、カメ子と何やら話しているぞ。それにしても、どうして今頃スズメ達がここに来たのかなぁ?

しかも、こんなにたくさんのスズメ達がやって来たのは初めてだ。

ワシは、最近、食べ物をベランダに撒いたこともないしなぁ。

すると、奥さんは主人の疑問に対し、淡々と答えた。

奥さん:ようやく過ごしやすい季節になり、動物達の活動も活発化してきて、生き物が食べ物を探す季節がやってきたのよ。ここ2年ぐらい、近所の家の屋根に、たくさんのカラスが留まっていることに気づかない?

トンビも、向こうの家の屋根からいつもこちらを覗き込んでいるわよ。

これは、きっと新型コロナウイルスの影響があるかもしれないわね。

だって、コロナ禍で、皆が自宅に引きこもっているので、たくさんの生ゴミが出て、それをめがけて、カラスやスズメが集まってくると思うのよ。

これって、「新型コロナウイルスでカラスが増えた」と言うことになるわね。

まるで、「風が吹けば桶屋が儲かる」と同じね!

すると、主人は「なるほど。上手い例えだなぁ。座布団1枚」と言った。

ところが、主人の次の質問に、奥さんの顔が一変し、主人に対して半ば呆れ顔で言ったのである。

奥さん:あなた。マジで「ワシは、最近、食べ物をベランダに撒いたこともないし」と思っているの?

カメの餌やりは、いったい誰の仕事なの?あなたの仕事でしょ。

これは、あなたがこの仕事を最後までやっていないということね。

実は、私がカメ子とカメ輔が食べ残したパンの屑をベランダに落としたのよ。

今回、スズ吉達がたくさんベランダにやって来たのは、カメ子達に与えたパンの残りがお目当てだったはずよ。

すると、これを聞いた主人は、一瞬あっけにとられた顔をして言った。

主人:そうだったのか。いつも、ワシがカメ子達に食べ物を与えていたが、お前に後始末をさせていたからなぁ~その後のことは知らなかった。面目ない。

(カメ子:ああ~また、主人が奥さんに怒られている。情けない)

吾輩は、奥さんの話しを聞いて思った。

カメ子:奥さんは、スズ吉の話しと同じようなことを言い、ちゃんと世の中の動向を把握しているようだ。

もしかして、奥さんはリアリストかもしれない。

一方、ベランダに落とした食べ物はパンだと言っていたなぁ。

そうだとしたら、そのパンは、吾輩がウクライナ侵攻に伴う「怒りの抗議」をした時に食べたあのパン※3の残りだったのかもしれない。

あの時、奥さんは、確か「ウクライナ侵攻の影響でパンは値上がりし高価になっている」と言っていた。そんな大事なパンを主人が吾輩に与えたんだ。

主人は、もう少し自分の仕事を自覚し、最後まで責任を持って、カメ達からも尊敬されるような人になってもらいたいものだ。

しばらくして、主人と奥さんが何かヒソヒソ話しを始めた。

きっと、吾輩に聞かせたくない話しだろうなぁ。と思った。

そうすると、かえって聞きたくなるのが人情で、ちょっと聞いてみることにした。

主人:スズメに食べさせるために、ベランダにパンを撒いたの?

奥さん:いいえ、本当はベランダに置いているゴミ箱にパン屑を捨てようとして、うっかり下に落としてしまったの。忙しくて、掃除する暇がなかったので、そのままにしていたらスズ吉達に見つかっちゃったのよ。

ベランダに洗濯物を干している時はスズメが来ると、糞をするので、困るのよ。

それに、鳥達はいろんなところに飛んで行って、足にどんな細菌をつけているかわからないから怖いわ。

やはり、吾輩が思っていた通り、奥さんはリアリストだった。

 

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:第58話 素敵な出会いPart3(未知との遭遇

  【カメのひとりごと】本には未掲載

:現実に即して物事を考え、また処理する人。現実主義者。 実際家。

 

※3:第144話 怒りの抗議【カメのひとりごと】