ある日、外出先から帰宅した主人が、いきなり奥さんに向かって大きな声で話しているのが聞こえた。
吾輩はその声を聞き、また何か事件が勃発しそうな嫌な予感がしてきた。
それで、いつものように二人の会話を盗み聞きすることにした。
主人は、奥さんに向かってこう言った。
主人:今日は、3年ぶりに映画館に行って、映画を見て来たよ。
その映画にとても感動して、涙と鼻水まで出てしまった。
すると、奥さんは、とてもびっくりしたようすで話し始めた。
奥さん:ええ、うそ~ あなたが涙を流すとは、信じられない。
まさに鬼の目にも涙だわ。
だってそうでしょ。あの有名な元プロ野球選手が、「男は人前で、むやみに泣く姿を見せるものじゃない。泣いて良いのは、親が死んだときだけだ」と言っていたけど、あなたは、親が死んだ時でさえ、泣かなかったのにね。
それだけ冷酷非道なあなたが、〇〇〇〇〇〇〇を観て泣くとはねえ~やっぱり、あなたはどこか変わっているわね。
そんな奥さんの過激な発言を聞き、日ごろ温厚な主人もさすがに腹が立ったのか?
反論をしていた。「その時、ワシは喪主だったので、届懲りなく役目を努めなければいけない。と、思い泣けなかった。でも、目の前に誰も居なくなると、自然と涙があふれてしまった」と、言い訳をし、奥さんにささやかな抵抗を示したのである。
すると、すかさず奥さんが
奥さん:へぇ~そうだったの。全然気が付かなかったし、知らなかったわ。
まあ~腹黒い「鬼の〇〇〇」ではなかったから良かったじゃない。と、言ったのである。(吾輩は、初めて聞く日本語はどうも苦手で、どうしても〇〇〇の部分が理解できなかった)
主人は、その奥さんの言葉に対し、どうしても納得がいかなかったようすで、吾輩がいる水槽に近づき、こう言ったのである。
主人:なぁ、カメ子。ウミガメが涙を流すことは、よく知られているが、ワシは、お前が涙を流している姿を一度も見たことがないぞ!お前もカメの中では、冷酷無慈悲なカメなのか?と言ったのである。
主人は、どうしても、吾輩を自分と同じ仲間に入れたいようである。
吾輩は、主人の話を聞き一瞬ムカッとしたので、主人とは、テレパシーを交わさず、心の中で反論した。
カメ子:吾輩だって、今までに涙を流したことはあるのだ。
ただ、鈍感な主人は、気が付かなかっただけじゃないか。
主人は、吾輩からの回答が何もなかったので、ガッカリしたのか?
奥さんのいる方向へ歩いて行った。
吾輩は、しばらくして、主人には本当に悪いことをした。と、反省をした。
そこで、主人と仲直りするつもりで、吾輩が答えなかった理由を説明し、ついでに主人が涙を流した素晴らしい映画の題名と、聞き逃した「鬼の〇〇〇」の部分について聞くことにした。
すると、主人は納得したようすで、映画の題名と聞き逃した「鬼の〇〇〇」の部分を教えてくれた。
映画の題名は、「ゴジラ-1.0」で、吾輩が聞き逃した諺(ことわざ)は、
「鬼の空念仏(そらねんぶつ)※1」だった。
※1:残忍だと考えられている鬼が、念仏を口先だけで唱えているというので、冷酷な人間が、柄にもなく殊勝に振る舞うことをいう。
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