カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第176話「知らぬが仏」「言わぬが花」Part1

    ある日の午後主人が、いつもの散歩から戻って来た。

そして、水槽の中にいる吾輩に近づき、突然、話し掛けてきた。

主人:カメ子、近くのスポーツパークで散歩をしていたら、野球のバックネット近くの水溜まりで水遊びをしているカラスを見つけたよ。翼を広げ、とても気持ち良さそうに行水をしていた。こんな光景はめったにお目にかかれないと思い、ダメ元で近づきスマホのシャッターを押した。

すると、そのカラスは、ワシに気が付いていながら逃げなかった。そしてさらに接近すると、カラスはワシに眼(がん)を付けて向かってきた。

最後に翼を広げ、突進して来たと思ったら、急に右上空に旋回して飛び立って行った。

そしてワシはその時、このカラスは、以前我が家のベランダに飛来し、立ち去る時にカメ子、カメ輔に捨て台詞を吐いたあの時のカラスかもしれないとピントきたのである。

カメ子、もしかしたら、いつかまた、我が家に復讐に来るかもしれないぞ。

吾輩は、主人の話を聞き、急に怖くなってきた。

そうだ。あの時も、カラスから「外に出る時は、頭上に注意した方が良いよ」と捨て台詞を言われたような気がする。

そして、吾輩があの時の状況を思い浮かべていると、突然、奥さんが吾輩と主人の会話の中に入り、前日、起きた夫婦喧嘩が再び勃発しそうな嫌な気配がしてきた。

奥さん:カラスがあなた(主人)に向かって来たからといって、あの時のカラスと同じカラスだとは限らないじゃないの。日本にいるカラスは二種類だって知っているの?

我が家に来たカラスがどのカラスで、今度のカラスはどのカラスか?なんてそんなことも知らないでしょう。

奥さんは、いつものように語気が荒くて、ひとこと多かった。

すると、主人からは、思ってもみないような意外な言葉が返って来た。

主人:言われてみれば、それもそうだなあ~

今日の主人は機嫌が良いのか?いつもとは違い、いとも簡単に自分の主張を取り下げたのである。

主人は今までの自分の言動を大いに反省し、小さなことで再び夫婦喧嘩をするより、自分の方から折れて我慢しようと思ったのか?

それとも、いつものように優柔不断な性格が出たのか?

それは、吾輩にはわからず、主人にしかわからない謎である。

今日の主人は、一皮むけたような大人の対応であった。

カメ子:いつも、主人の態度が大人だったら、今までのような夫婦喧嘩は起こらなかったのになぁ。

奥さんは鬼嫁だが、決して間違ったことを言ってはいない。

 

この話の後編は意外な方向に展開し、最後にこのカラスの正体が明らかになる。

次回を乞う御期待‼

 

:第137話 航行の自由作戦

 

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