あれは確か、西暦2015年の春のことであったか? 吾輩の住まいの隣に、新築の家が建ち、そこへ新たな家族が引っ越してきた。
ある日の午後、その一家が挨拶に訪れた折、吾輩は主人と共に自宅の庭先で散歩をしていた。ちょうど、そのとき、5歳になるという娘と目が合った。
この娘、どうやら大層な動物好きらしい。吾輩を見るや否や、キラキラと目を輝かせ、「カメさん、かわいいね!お名前は?いくつなの?」と問いかけてきた。無論、吾輩は言葉を解するが、それを口にする術を持たぬ。仕方がないので、「シュッシュッ」と鼻を鳴らし、せめてもの挨拶とした。すると、娘はその音を面白がり、さらに吾輩を覗き込む。まるで、千年の昔より現れた不思議な生き物でも眺めるかのように。
その後も、娘は、主人の姿をみかけると声をかけるようになった。「カメのおじちゃん、おはようございます!お出かけですか?」と、天真爛漫な様子である。その無邪気さに、主人も目を細めていた。やがて、吾輩と娘は共に公園へ散歩に出ることも増えた。
一方、兄とやらは、いささかやんちゃな性質を持ち合わせていた。公園で拾った棒を振りかざし、吾輩の甲羅をコンコンと叩く。痛いこと、この上ない。しかし、ここで抗議をすれば、せっかく築いた隣人関係に波風が立つ。吾輩はぐっと堪え、じっと身を縮めていた。
この一件を見ていた隣家の奥方が、申し訳なさそうに玉葱を3つ持ってきた。「すみません」と言いながら。しかし、それが吾輩の口に入ることはなかった。もっとも、食えずとも吾輩は満足であった。なぜなら、これこそが吾輩が生まれて初めて稼いだ「報酬」だったからである。
世の中、人の役に立つというのは実に心地のよいものだ。 『スーパーボランティア』とやらの心持ちが、少しばかり理解できたような気がする。我が家には「働かざる者、食うべからず」という家訓があるらしい。ならば吾輩も、主人のため、世のために、何かしら役立つ存在となりたいものである。
そして、隣家の女の子は現在、中学生になっており、進学校への受験勉強が忙しいらしく、主人と会う機会も少なくなった。
だが、久しぶりに会った時は、「あっ、カメのおじちゃん」と人懐こく挨拶してくるらしい。
読者諸君も、どうか吾輩の奮闘にご期待あれ。次回はさらに面白い話を用意している。どうぞお楽しみに!
【読者の皆様へ】
この度、新しいチャレンジとしてAmazonのkindle(kindle unlimited会員の方は無料で読めます)で「カメのひとりごと」をバージョンアップさせた本を出版しました。
題名は「あなたの本当の気持ちが知りたい 千年の時を超える愛」という本です。
本の内容は、1000年という時を超え、「本当の自分の気持ちとは何か」「人を愛するとはどういうことか」「女性としてどう生きるべきか」を問う、心優しくも深い内容の物語です。
現代に暮らす平凡な女性が、ひょんなことから平安時代にタイムスリップし、あの有名な女流作家「紫式部」と出会い、心を通わせていくSFファンタジー×歴史×ラブストーリーです。
今回の物語の主人公は、おなじみのキャラクター、ユーモラスでかわいい日本イシガメの「カメ子」ではありません。
今回の中心人物は、「カメ子」の飼い主でもある「奥さん」です。彼女の願いを叶えてあげたいと一途に思う「カメ子」とその仲間たちが大活躍をし、奇想天外な物語を繰り広げます。
奥さんの願いは、千年前の平安時代に身を置き、紫式部の人生を生きてみたいという壮大なロマンで、“紫式部と入れ替わり道長様の本当の気持ちが知りたい”という夢のような話です。
くすっと笑えたり、じんわり心に染みたりと、感情をやさしく揺さぶる内容になっています。
また、随所に登場する未来のおもちゃやテレパシーで会話をする動物たちなど、SFとファンタジーの要素も絶妙に組み込まれており、大人から子どもまで楽しめる構成になっています。
あなたも是非、本を読んで、私と一緒に心揺さぶられる旅に出かけてみませんか?
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