カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第162話 悪魔のささやき

 

 吾輩は、夢にみていたご先祖様との会見が実現し、なんだか心がウキウキして、今日は、何か良いことが起こりそうな気がしてきた。

すると、主人がおもしろいことを言いながら吾輩に近づいてきたのである。

主人:おい、カメ子。ワシとにらめっこをしないか?

主人から見れば吾輩は、暇そうに見えるかもしれないが、水槽の中の散歩や首のこりをほぐすための運動をしなければいけないので、忙しいのだ。主人が散歩に連れて行ってくれたら、こんなことをしなくても済むのになぁ。主人とにらめっこをする暇なんてないよ。吾輩が、ブツブツとひとりごと言っていると、突然、奥さんが2人の会話の中に入り、呆れ顔で言ったのである。

奥さん:あなた達って、暇な吾人ね。

(カメ子:吾輩は暇ではない。主人と一緒にしないでくれ)

そして、主人が、奥さんの冷ややかな言動を無視して吾輩に寄って来た。

そして、何かを言い始めたのである。

主人:だるまさん、だるまさん、にらめっこしましょう。笑う笑うと負けよ、あっぷっぷ。

吾輩は、今日は何か良いことが起こりそうなので、「まあ、いっか。しょうがないなぁ~」と思い、渋々ゲームに参加した。

このゲームは、何もしなくて良いし、とにかく動かなければ勝つ、これは、カメの得意分野だ。

そして、しばらくの間、2人のにらみ合いが続いた。

すると、どういう訳か、ふと、「うさぎとかめ」の話が、吾輩の脳裏に浮かんできたのである。あの時のカメは、苦手な「かけっこ」にも勝ったし、いわんや、動いたら負けの「にらめっこ」になんか負けるはずがない。

しばらくして、主人に変化が現れ、もうそろそろ我慢ができなくてなってきたようだった。色々とうんちくを述べて気を紛らわしてきたようだが、本当は、しゃべったらその時点で負けになるのになぁ。仕方がない、武士の情けで、これもよしとしよう。

主人:カメ子、お前はやっぱり手ごわいな。カメは、警戒すると相手をじっと見つめて、まばたきをしないと言うが、それが今のお前だね。ちょっと気を抜くと、喉を鳴らす(喉を膨らませて呼吸する)と言うが、それすらしてないね。

そして、しばらくの間、この後も膠着状態が続いた。

ところが、今度は吾輩の方に異変が起きて、悪魔がささやきが聞こえてきたのである。

悪魔:もうそろそろ、人間は降参します。時間の問題ですよ。

ここは、静かに待っていましょう。「果報は寝て待て」と言うでは、ないですか。

その悪魔のささやきを聞き、吾輩は、「寝ていても果報がやってくるなら、それでも良いか」と思えてきた。

そして、そう思うと急に眠気がさし、居眠りを始めたのである。しばらくして、白いモヤの向こう側から、いつかどこかで見たことがあるような風景が現われてきた。

向こう側には、小高い丘があり、その丘の上に旗らしきものが風になびいている。

あれっ、この風景は、いつかどこかで見たことがある光景だ。そうだ、「うさぎとかめ」だ。だとすると、「吾輩はいったい誰?」と我が身を見ると、なんと吾輩はうさぎになっているではないか‼いったいどういうことだ?良くわからないまま、茫然としていると、再び悪魔がささやいてきた。

悪魔:ほら、良い匂いがしてきたよ。あっちを向いてごらん。

吾輩は、「いったい何のこと?」と思いながら、良い匂いがする方向を無意識に振り向いた。とその時、突然、驚くべきことが起こり、ピッ♪ピッピッ♪ピッピッ♪とアラーム音が鳴り響いたのである。吾輩がびっくりして目を覚ますと、主人が吾輩をのぞき込んでいた。そして、開口一番、こう言った。

主人:俺はカメ子に本当に悪いことをした。ごめんなぁ。

ワシは、今から散歩に行くことにする。この勝負は、都合により引き分けとするからな。

そう言うと、主人は散歩の服装に着替えて、さっさと家を出て行ってしまった。

何のこっちゃ。吾輩は呆れるとともに、段々と怒りが込み上げてきた。

すると、奥さんが食事の支度をしている最中で、良い匂いをプンプンさせて吾輩に近づいて来て言ったのである。

(カメ子:あれっ、この匂いは夢の中で嗅いだあの匂いではないか)

奥さん:主人は、本当にわがままでしょう!

しばらくして、吾輩は、まだ、怒りが収まらないまま、今回の出来事について考えてみた。

どうして、吾輩はうさぎになったのか?

うさぎは、「うさぎとかめ」の物語の中で、油断や慢心の象徴でもある。もしかして、自分の心の中の油断や慢心の悪魔がささやいて吾輩を居眠りの世界に導いたかもしれない。

そして、とどめは、吾輩を貶(おと)しめようとする、あの良い匂いだ。

うっかり良い匂いがする方向へ行っていたら、吾輩はそこで負けとなっていただろう。

読者の皆様は「うさぎとかめ」の話の続きをご存じですか?

いくつかある逸話のひとつに、うさぎは仲間から、カメに負けてしまったということで、袋叩きにされたという話がある。

もし、この話が本当だったら、怖い話だ。カメが勝って本当に良かった。

吾輩を救ってくれたのは、あのアラーム音だ。アラーム音は吾輩の恩人だ。

でも、主人は、いつもアラームをセットしないのに、どうしてその時に限ってセットをしたのであろうか?

あっ、もしかして、アラーム音を鳴らして吾輩を救ってくれたのは、我がご先祖様かもしれないなぁ。ご先祖様は、あの時、吾輩に向かって、「我が子孫よ。もし、何か困ったことがあったら、その叫びを発してくれ。その時は、この世から応援するからな」と言っていた。

ところで、話しを元に戻すが、どうして吾輩はうさぎになってしまったのだろう?

もしかして、吾輩自身が油断と慢心の悪魔になっていることを知らしめるために、ご先祖様がうさぎに化身させたのかもしれないなぁ。

ご先祖様は、吾輩が人間様に負け、同じカメ仲間からも馬鹿にされて嘲笑されているところを救ってくれました。本当に感謝をしています。どうもありがとうございました。

あれっ、「今日は何か良いことが起こりそうな気がする」と思っていたが、それは、もしかして、このことかもしれないなぁ?

 

       にほんブログ村 その他ペットブログ イシガメへ
      にほんブログ村

        ↑ ↑ ↑

無料ですので、ポチッとして応援して下さいね💛

 

       ブログランキング・にほんブログ村へ

      にほんブログ村 

        ↑ ↑ ↑

   ランキングに参加中です!  

  ポチッとして応援して下さいね💛

 

       にほんブログ村 その他ペットブログへ
      にほんブログ村

        ↑ ↑ ↑

無料ですので、ポチッとして応援して下さいね💛

 

     PVアクセスランキング にほんブログ村

        ↑ ↑ ↑

    ランキングに参加中です!

   ポチッとして応援して下さいね💛

 

:第161話 お彼岸Part2