カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第161話 お彼岸Part2

 


  今回の話は、いよいよ佳境に入ります。

読者の皆様 どうぞ、お楽しみください。

棟梁:さあ、このブドウを食べてみなさい。ほろ酔い気分で良い気持ちになるよ。

(カメ子:えっ、その正体はブドウだったのか)

吾輩は、棟梁に勧められるがままブドウをかじった。するとどうだ。口の中に、甘いブドウの汁が溢れ出してきたのである。「なるほど、それで棟梁が「乾杯」と言ったのだなぁ」と思った。でも、このブドウ、以前食べたことがあるブドウの味とちょっと違って酸っぱい味がするぞ。

しばらくして、吾輩は、棟梁が言っていたようにほろ酔い気分になってきた。一方、カメ達は、各自で持ってきた食べ物を自由に食べ始めていた。さっそく、吾輩もご相伴にあずかろうと思い、目の前にある食べ物を見た。

すると、唖然とするとともに、急に食欲が萎えてきたのである。なんと、それらの食べ物のほとんどが腐りかけた魚やそれに群がっていたハエや虫ばかりで、デザートの果物は、半分腐りかけている野イチゴが少しあるだけだった。

吾輩の食事は、主人が新鮮な魚の刺身を食べさせてくれていたのだが、主人は、いつも奥さんから、「カメ子にそんなにたくさんの刺身を食べさせたら、お腹をこわすかもしれないじゃない」と怒られていた。

吾輩は、「目の前にある半分腐りかけた食べ物を食べると、腹痛を起こすかもしれない。この時代じゃ、病気を治してくれる医者なんて居ないだろうなぁ」と思った。

でも、食べないとご先祖様に失礼だし、隣では、棟梁が吾輩の様子をじっと見ている。いったい、どうしたらいいだろう?と思い悩んだ末、ついに、「ええい、どうにでもなりやがれ」と思い、腹をくくった。

吾輩は、半分腐りかけた魚を思いっきり食べた。するとどうだろう。食べてみると意外と美味しいではないか。これは、初めて味わう味だ。それに食べてもお腹が痛くなるってことはないみたいだ。

お酒の量がすすんでくると、棟梁は、再び吾輩に何かを囁いた。そして、それから、さらに深いご先祖様の話が始まったのである。

棟梁:あなたが、私たちの住むこの世界に訪れてくれて、ありがたいと思っている。今日は、未来の進歩した技術や知識等を聞いて本当に勉強になった。ワシらもそれらを参考にして、この厳しい世界でなんとか生きていくことにするよ。

ところで、食べ物はどうだい?旨いだろう?この時代には、氷なんてものはない。だから、カメ達は捕獲した食べ物を一旦草むらの日陰に置き、腐るのを防いでいる。

しかし、どうしても腐敗は止めることができない。食べる時に、少し臭かったかもしれないが許してくれ。

(ああ~吾輩の心はすべてお見通しだったようだ)

それと、見てのとおり、カメ達は食べ物の残りを、草むらに貯めておき、食べ物が得られない時にこれを食べて忍んでいる。一方、食べ物がないカメ達には、たくさん持っている物が分け与えている。こうして、みんな助け合って生きているのだ。だから、カメ達は食べ物を粗末にせず、とても大事にしている。

ところで、どうして、カメ達は助け合って生きているのかが、わかるか?さっき言ったように、助け合わなくては飢え死にしてしまい、生きてはいけないからだ。

そして、ヘビやカラス、イノシシ等の敵から身を守るためには、絶対に助け合いが必要となるのだ。

カメ達は、敵が近くにいないか交代で監視をしている。一人だと眠っている間に、敵から襲われて殺されるかもしれないからね。だから、自分が監視当番だと自分だけではなく、みんなの命を守らなくてはならないから、ますます責任重大だ。それに、敵は動物だけではなく、自然の脅威もある。

我々カメ達は、毎年どこかで洪水に襲われ、ついには海まで流されて死んでいる。そこで、カメ達は川の石の上で甲羅干しをする時、その中のひとりは、必ず首を長く伸ばして、空を見上げて雲の様子を観たり、川上からの水の流れを監視したりしている。そして、洪水の気配があれば、直ぐに皆に知らせ、川から離れるように言って回るのだ。こうして、自然界でカメ達が生き抜いていくには、いつも緊張して生活していかねばならず、心が休まる時がない。

カメ達は安心して暮らせるように、お互いに助け合って生活しているのだよ。

だんだんと辺りが暗くなってきたが、棟梁の話しはこの後もまだまだ続いた。そして、吾輩の右脳にまた、あの子孫が現れ、吾輩に向かってささやいたのである。

子孫:辺りが暗くなってきたので、もうそろそろ、おいとました方が良いかもしれませんよ。野生のカメ達は、暗くなってきたら行動をしませんからね。

吾輩はそれを聞き、「そろそろお開きかもしれないなぁ」と心の中で呟いた。すると、棟梁は、「もう暗くなってきたので、この辺でお開きとするか」と言ったのである。

そして、棟梁は、あの女性のカメ2に向かって、何か合図を送った。すると、彼女は、急に後ろ側の草むらの中に入って行き、しばらくしてから出て来て、吾輩に近づいてきたのである。すると、彼女は、甲羅の上に何か草で包まれた謎の品を載せていたのである。そして、彼女は言った。

カメ2:これは、私達カメからのお土産です。あちらの世界で開けて下さい。

そして、最後に棟梁は言った。

棟梁:我が子孫よ。もし、何か困ったことがあったら、その叫びを発してくれ。その時には、この世から応援するからなぁ。

そう言うと、吾輩の目の前にいた女性と棟梁の姿が段々と消え始め、辺り一面が白いモヤに包まれていった。そして、しばらくすると、白いモヤの向こうにどこか見たことのある青い水槽が見えてきた。さらに、その前の水面には、ふやけて膨らんでいる吾輩の食べ残しのマメとその横に見慣れない小バエ2匹、そしてどこかで嗅いだことのある匂いがするエビが浮かんでいた。どうやら夢から覚めたようだ。そして、吾輩は、そのマメを見ていると、なぜか急に恥ずかしくなってきて、思わずそれらの全てをペロリッと平らげたのである。

吾輩は、しばらくボーッとしていたが、今まで夢の中で起きた出来事を頭の中で整理してみた。そして、あることがふと浮かんできたのである。吾輩がタイムスリップし、過去の世界に飛び込んだ時、最初に吾輩に眼(がん)をつけてきたあのカメ1は、どこかで見覚えがあるカメだと思っていたら、

あれは、カメ輔だ。

だって、カメ輔はいつも縄張りのことで、他の生き物に難癖をつけていたからな。そして、その後、出て来た紅一点のカメ2は奥さんで、最後に登場したカメの棟梁は主人だよ。でも、どうして、奥さんや主人が過去の世界に出てくるのだろう?吾輩は全くわからなかった。

 

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[後記]

 この度、カメ子がタイムスリップした過去の世界は、厳密にいうと本当の過去の世界ではなく、西暦30世紀のAIで、カメ子に関するあらゆるデータを基にカメ子自身が創造したバーチャル空間なのです。

だから、カメ子は、過去の世界の登場人物を自分の知っている人物に創りあげたのでしょうね。

一方、カメ子は、自分が食べたマメをじっと見て、どうして自分が嫌になったのでしょう?さらに、見慣れない小バエやエビがどうしてそこに浮かんでいたのでしょう?

その謎については、カメ子のみぞ知る。ですね!

 

:このブドウとは、正確にはヤマブドウのことで、食べると酔うのは、ヤマブドウが発酵して、ぶどう酒になったかもしれません。

:この味は、腐れる前に出る旨み食味成分であるかもしれません。

:第158話 蝉しぐれPart1