カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第109話 刎頸(ふんけい)の友 Part1

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  今日は、とても良い日になりそうな気がする。

なぜ?って、主人と奥さんが、吾輩とカメ輔を遊びに連れて行ってくれるからだ。

果たして、どこに連れて行ってくれるのか?とても楽しみだ。

そして、その時がやって来た。

朝の10時頃に主人が、吾輩とカメ輔を透明な水槽に入れて車に乗せた。

その後から、奥さんが車に乗り込み全員が揃ったところで、

さあ、ドライブの始まりだ。

ところが、車に乗るとすぐに、カメ輔の大暴れが始まった。

水槽の壁をよじ登り、外に飛び出したのである。

ああ~また、カメ輔がしでかした。

まったく、もう、おかげで、カメ輔のおもり役の吾輩が、

主人から「躾がなっとらん」と、怒られることになるんだぞ!

当のカメ輔本人は、相変わらずのほほんと平気な顔をしている。

まったく、カメ輔には、困ったものだ。

車に10分ぐらい乗ったであろうか?ようやく目的地に到着した。

車外に出ると、以前見たことがあるような景色が広がっていた。

でも、ここがどこなのか?よくわからない。

透明な水槽の中から外を見ると、向こう側には運動公園が見えた。

そこには、元気に活動している人間たちがたくさん見える。

コロナ禍なので、久しぶりに 主人以外の人間を見た。

主人は、早速、吾輩とカメ輔が入った2つの水槽を持って、この場所から移動した。

しかし、主人が手抜きをして、2つの水槽を一度に運ぼうとしたので、地震のように揺れた。

吾輩は、おかげで、いささか、乗り物酔いをしてしまった。

(カメにだって、平衡感覚ってものがあるんだぞ!)

隣にいるカメ輔も、水槽の中で外に出ようと悪戦苦闘しているようだ。5分ほど水槽の中で揺られたであろうか?

やっと、目的の場所に着いた。

さっそく地面に降ろされると、甲羅の中から顔を出し、周囲を見渡した。

そこには、石で出来たベンチと、積み上げられた砂の山があった。

反対側には、グランドが広がっており、そこでは、子供達がサッカーの練習をしていた。

やはり、ここは、いつか来たことがあるよう

な気がするが、どうしても思い出せない。

そして、前を見ると、カメ輔の顔があった。

彼もこちらを見ていた。

「ははぁ~ん。また、主人が、吾輩とカメ輔を迎え合わせに置いたんだなぁ。

これには、何か深い意図があるのか?

吾輩にカメ輔の面倒を見ろということなのか?

もしかして、吾輩とカメ輔を戦わせようとしているのかな?」と思っていると、

カメ輔の方から話しかけてきた。

カメ輔:お兄ちゃん。いったい、ここはどこ?

よくわからないから、僕は探検に行ってくる。

でも、心配しないで。今度は脱走なんかしないから。と言うと、

さっそく、今居る場所から右側に広がってい

るグランドに向かって歩き出したのである。

吾輩は、カメ輔に「おまえの好きなようにしな!」と言いつつ、

果たして、吾輩はどうすべきか?と思いながら、

もう一度、辺りを見渡した。

そうだ、「大切な主人を忘れていた。どこに行くにしても、

まずは、主人だ」と思い、主人を探した。

主人は、右側の広場にいた。

剣道の蹲踞(そんきょ)をしているような格好で、吾輩を見ていた。

吾輩は、主人に 向かって進んで行き、 やっと、足元にたどり着いた。

吾輩は主人の靴の上から臭いを嗅いでみた。

すると、やっぱり主人の匂いがした。

そして、主人は言った。

主人:お~っ、やっぱりカメ子は律義だなぁ。

それに比べて、カメ輔は、困ったものだ。

また、逃亡するつもりなのだろう。

吾輩は、「これも、宮仕いだ。我慢、我慢」と

思いながら、主人の股の間をくぐり抜けて、グランドの方に向かった。

5mほど、歩いたであろうか?

そこには崖があり、前が立ちふさがっていた。

崖といっても、20cmほどの窪みで、横に長く伸びていた。

そこで、吾輩は「これじゃ、前には進めない」と思い、

意を決し、窪みの中に頭から突っ込んで行った。

一瞬痛いと思ったが、窪みの中に落ちるや、いなや、

向こう側の壁をよじ登ろうとした。

しかし、登れそうもない。

これも、歳のせいなのかなぁ?自分でも、半分情けなかったが、

「ここから登らなくても、どこかに、壁の低い所があるかもしれない。

そこを探して登ろう」と思い、窪みに沿って歩んで行くことにした。

今度は、10mほど歩いたであろうか?

向こうの方に3人の中学生ぐらいの男の子たちがいて、

吾輩の様子をじっと伺っていた。

最近では、こんなに若い人間を近くから見るのも久しぶりだ。

吾輩は、さらに進み、彼らの足元までにやって来た。

すると、彼らの中の1人が、吾輩の後方にいる主人に向かって、

話し始めたのである。

「おじちゃん。カメを見ても良い?

こんなにカメを近くで見るは生まれて初めてだ」と言った。

これに、主人は「見ても良いよ。このカメの種類は何かわかるかい?」と

聞き、彼らは、頭を横に振り、「わからない」と答えた。

そして、主人は、いつものように、吾輩の自慢話を始めたのである。

主人:このカメは、ニホンイシガメと言って、そんじょそこらにいるカメとは

ちょっと違うんだよ!準絶滅危惧種に指定されているんだ。

皆は知らないとは思うけど、カメってとっても賢くて人間の言葉を

理解することができるんだよ!等を自慢げに話し、そして、最後には、

「カメのひとりごと」の本の宣伝まで始めたのである。

吾輩は、何だかこそばゆくなってきた。

すると、彼らは、直立不動の格好から、膝を折り曲げて、

顔を吾輩に近づけてきたのである。

そして、吾輩の顔をジロジロ見ながら、一言を発したのである。

少年:カメの顔って、カエルに似ていて、可愛いな~

その言葉を聞いて、吾輩は嬉しかったが、

ひとつだけ気にくわないことがあった。

カメ子:吾輩が、カエルに似ている?

そうじゃなくて、カエルが吾輩に似ているんだよ。

カエルは両性類で、吾輩は爬虫類だ。吾輩の方が上だぞ。

それに、人間だって、吾輩と同じ顔をしているじゃないか?

目が2つ、鼻が1つ、耳が2つ。口が1つ。

これでも、吾輩はモデルだぞ!

最近は、テレビにも出演して、みんなから「可愛いカメさんね!」って

言われているんだぞ。(いつの間にか、自分の自慢話が始まった)

さっきまで、主人が吾輩のことを褒めちぎっていたのに、

少年の一言で、興ざめしてしまった。

この後、彼らはこの場を立ち去り、今度は、カメ輔の方に向かって行った。

吾輩は、久しぶりに、素敵な出会いがあり、とても、楽しい1日であった。

でも、これだけでは終わらず、いよいよ、この後、刎頸(ふんけい)の友が

登場するのである。

次回を乞う期待!

 

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