カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第194話 思いやり

 

 さて、本日は「思いやり」について一筆したためたいと思う。

 吾輩は、主人と奥さんの家で、恙無く(つつがなく)毎日を過ごしている。

だが、最近、主人が慢性副鼻腔炎アレルギー性鼻炎を患い、通院を余儀なくされているようである。

そんなある日の午後、主人はいつものように病院から帰宅した。

 帰宅するなり、いきなり奥さんに話しかけた。

「今日の病院は、子供がとても多く待合室は、ちびっこたちで溢れかえっていたよ。診察室からは、大きな声で泣き叫ぶ声が聞こえ、ある男の子は、診察室に一緒に入ったお父さんに、『お父さん助けて!』なんて叫んでいたんだよ。その一方で女の子は、診察中は泣いてはいたが、診察が終わるとすぐにピタリと泣き止んでいた。大人の女性もそうだが、やはり女の子の方が肝が据わっているようだ。

 さらに、主人は続けた。

「わしが、待合室で会計を待っていると、治療を終えたばかりの3歳ぐらいの女の子と目が合った。その女の子は、目にいっぱい涙を浮かべていたが、わしにこう言った。『おじちゃん、頑張ってね』って。まだ、小さいのに自分の痛みに耐えながら、他人を思いやることができるなんて本当に驚いたよ。」

 奥さんは、苦笑しながら呆れたような口調でこう言った。

「それに比べて、あなたは、『苦しい』だの『しんどい』だのと弱音ばかり吐いているじゃない。あなたより、その女の子の方が、よっぽどしっかりしているわ。それに、人に対する思いやりだって、あなたよりあるじゃない」

 主人は、ムカついたので、奥さんに言い返そうと思ったが、怒らせると仕返しが怖いので、その言葉をぐっと呑み込みこんで我慢した。そして、自分が、今までやってきた行いについて思い返してみた。

主人には、弟が1人いる。 弟が中学生の頃、主人と同じ病を患っていた。

いつも、主人は弟に向かって冗談半分に、「ちくのうにょう♪、あ、ちくのうにょう♪、お前の鼻は、ちくのうにょう♪」と囃し立て、弟をからかっていた。そのときの弟の悲しそうな顔が、今でも脳裏に焼き付いて離れない。

「あのときの俺は、人に対する思いやりがなかった。弟には、本当に悪いことをしたと反省している」

 これが本当の「主人のひとりごと」だ!

 そして、思いはカメ輔にまで及んだ。幼い頃、カメ輔が、「ヒューヒュー」と奇妙な音を立てて鳴いていたことがある。主人はそれを風邪か蓄膿症に罹ったのだろう。と安易に考え、水槽にお湯を入れて温めれば、すぐに、良くなる。と考えた。しかし、症状は悪化するばかりだった。

「今から思うと、カメ輔の鼻に水が入り、口呼吸しかできなくなってしまい苦しがっていたのだ……。」

 主人は、カメ輔の水槽の前に立ち呟いたが、カメ輔は、何も言わなかった。ただ、甲羅の中に頭を入れ、じっと主人の話を聞いているように見えた。

「わしは、今まで、本当に相手に対する思いやりの気持ちが足りなかった……。」

 主人は、「ひとりごと」をぽつりと呟いた。

「このことを小さな女の子が、気づかせてくれたなんて、本当に情けない。でも、これからはちゃんと相手の気持ちを考えようと思う」

 そう言いながら、主人はカメ輔の前足をじっと見つめた。そして、1部分が白く変色していることに気づき、心配そうな顔をした。

カメ輔「痒いだろう?すぐに治してやるからな」と言った。

 その声は以前よりも少し優しく、そして力強かった。

 翌朝、吾輩は水槽越しに主人を見つめた。主人はいつものように鼻をすすりながら、水槽の水替えをしてくれていた。そして、その表情には少し変化がみられた。あの小さな女の子の言葉が、主人の心に刺さり、何かしらの変革をもたらしたのであろう。

 吾輩は、「早く病気が治り、以前のように愉快で楽しいご主人様に戻ってほしい」と願った。

 こうして、吾輩とカメ輔の平凡で幸せな日々は、今日も静かに流れていくのである。

 

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第193話 諸行無常の響きあり

 


 ある日の朝、主人と奥さんは、健康診断を受診するため病院へ出かけた。人間は、健康診断ができて良いなぁ~カメには、健康診断なんてものはない。しかも、無料で受診できるなんて羨ましいなぁ。

そして、その日の午後、2人は少々疲れた様子で、家に帰って来た。家に入るや否や、奥さんと主人が会話を始めた。その時、吾輩は、今日もまた、わが身に振りかかるかもしれない不幸なことを想像すると、嫌な予感がしてきた。

奥さん:あなた、身長を測る時、測定してくれた人に「そんなはずはない。もう一度測り直してくれ」と、随分文句を言っていたわね!

すると、主人は言った。

主人:だって、いつもの身長に比べて、1cmも低かったのだよ。測定の仕方が、おかしいと思わない?

歳のせいか?はたまた、スマホを使っているときの姿勢が悪いので、背中が丸くなって身長が縮んだかもしれないなぁ。

奥さん:ふーん。

いつもは弁舌さわやかな奥さんが、今日は、珍しくこれ以上は、何も言わなかった。

この返事を聞いた主人は、少し拍子抜けしたようすであった。そして、それから主人の独演会が始まったのである。

主人:あ~えっ。わしは、ごらんのように目がぱっちりして、鼻筋もとおっているので、独身のときは、イケメンで恰好良かったのだよ。正面から見ると高橋英樹、横を向けば、杉良太郎に似ているって言われていた。職場の女性からは、「ダンデイさん」と呼ばれていたしね。

へえ~そうなのだ。なるほど主人は、目がぱっちりとしていて鼻筋もとおっている。でも、高橋英樹杉良太郎がどんな人物で、どんな顔をしているのか吾輩には、わからないし、どんな判断基準でイケメンと言うのだろう?人間ではない吾輩には、さっぱりわからん。

すると、突然、カメ輔がテレパシーで吾輩に話しかけてきた。

カメ輔:この前、主人は、奥さんからもらったある物を見ながらニタニタして、奥さんと話していたよ。僕はその時、「いったい何だろう?」と思い、水槽の中から立ち上がって見た。すると、それが、ちらっと見えたんだ。二人の話しの内容からすると、どうやら二人の結婚式のときの写真のようだった。僕は、「高橋英樹杉良太郎」のことを知っていたので、写真に写っている主人の顔と見比べて。すると、確かに2人と雰囲気は似ていると思った。もし、彼らのことを人間社会で、イケメンと言っているのなら、その当時の主人はイケメンだったと思うよ。

(カメ子:へぇ~そうなのだ。で、今は、どうなの?)

すると、今度は、この話を聞いていたユッカ姉さんが、突然2人の会話に割り込み、こう言った。

ユッカ:あなた達は、まったく、もう。

女性の私から言わせてもらうと、主人の顔は、「蓼(たで)食う虫も好き好き」だわね。

(カメ子:ユッカ姉さんは、主人のことをよくもまあ、そこまで言えたものだ)

3人間で言いたい放題言いあっていると、突然、主人が話し出したのである。

さあ~そろそろ思っていたように、嫌な予感がしてきたぞ。

主人:わしは、若い時は背が高く、髪の毛もふさふさしていて恰好良かった。しかし、結婚してからというもの、背は縮み、髪の毛も随分少なくなった。これは、結婚生活で虐げられているストレスかもしれない。わしは、ストレスが原因で婦源病になったかもしれん。

あ~あ。とうとう主人が禁断の言葉を言ってしまった。すると、今まで黙っていた奥さんが、相当怒ったようすで話し始めたのである。

奥さん:何を言っているのよ。あなたは、結婚するときから背が低かったくせに。2人で結婚式の写真を撮影している時も、あなたは、シークレットブーツを履いて写真を撮っていたじゃない。今度の健康診断で身長が1cm縮んだのは、髪の毛の量が少なくなったからじゃないの。私に文句を言ったので、今日の夕飯は抜き!

あ~あ、ついに奥さんが大爆発してしまった。このようすじゃ、吾輩も今日は夕飯にはありつけないだろうなぁ。とばっちりもいいところだ。ああ、嫌な予感が的中してしまった。

なぜ、主人は、奥さんが怒るようなことを平気で言うのだろう?呆れるとともに、怒りを覚えてきたので、しばらくの間、頭を冷やすことにした。

そして、しばらく経った後、改めて主人について考えてみた。

カメ子:カメ輔が言うように、主人は結婚する前の若かりし頃は、イケメン、モテモテで、その時が主人の最高のモテ期だったのだろう。でも、今の主人を見ていると、その黄金期は、もう二度と来ないだろう。と思う。

そして、吾輩の頭の中に主人がいつも言っている言葉が浮かんできたのである。

祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり』

ああ、何だか主人がとても、可哀そうに思えてきた。

そして、その時は、カメ輔がチラッと見た主人と奥さんの結婚式の写真が見たかったが、今は全然見たいとは思わなくなった。なぜなら、写真を見るのがとても怖いからだ。

あっ、そういえば、イケメンと言われている吾輩の顔も、いつの間にか知らぬ間に老けているのかもしれないなぁ。そう思うと、吾輩も何だか悲しくなってきた。   

 

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第192話 ごめん Part2 

ちょっとカッコ良くなりすぎたかなぁ?

 

しばらくすると、吾輩の後方に何者かが近づいて来る気配を感じ、後ろを振り向いた。すると、黒い猫がこちらをじっとみつめていたのである。

吾輩にとっては、初対面の黒猫であるが、主人にとっては例の黒猫であったようだ。

主人の話によると、この黒猫は、公園の横にある資材置場に住みついている野良猫のうちの1匹で、この黒猫の他に、白黒の猫、シャム猫と黒猫とのハーフが数匹いるとのことである。

いつも、夕方の5時頃になると、そこに集まって来るようになり、近所の人が、この猫たちに餌を与えているようである。

その黒猫は、ニャ-ニャ-と泣きながら吾輩に体を摺り寄せてきたので、吾輩は、テレパシーを使って話しかけてみた。

カメ子:おい、猫ちゃん。(主人が命名すると、相変わらず単純な名前だなぁ)

カメ子:何か欲しい物があるのかい?

すると、黒猫が答えた。

黒猫:お腹が空いているので、何か食べ物をください。

おじさんは、とても優しそうだから何か食べ物をくれるかも?と思ったのさ。あれっ、おじさんは、テレパシーが使えるの?人間にこんなことをされたのは初めてだよ。

(主人は、本当に動物に好かれるみたいだ。いつだったか?奥さんが、友達と電話をしていたときに「あなたの旦那さんは、優しそうなので、モテルんじゃない?」と質問されていた。すると、奥さんは、「主人は、外面だけは良いから、そうかもね」と答えていたが、吾輩は、動物には、人間の内面を見通す力がある。だから、そんなことはないと思った)

そして、さらに吾輩は言った。

カメ子:気が利かなくてごめん。今度、来るときは、何か食べ物を持ってくるよ。これからは、テレパシーを使って情報交換をしよう。

黒猫:うん、そうだね。人間の気持ちや生活について、とても興味があるから楽しみだ。また、会おうね。

と言うと、こちらの方を見ている人(夕方、猫ちゃんたちに餌を与えている近所の人)の方へ向かって去って行った。

吾輩は、今回、主人と入れ替わったことで、主人のひととなりや行動範囲がわかっておもしろかった。

さぁ、そろそろ家に帰ろう。今頃主人は、狭くて臭い水槽の中で「なんで、ワシがカメ子にならなきゃいけないんだ」と怒り狂っていることだろう。

でも、吾輩は最近、夢の中で西暦30世紀の子孫に会った覚えもないし、入れ替わりシールを使いたいと思ったこともないのに、どうして主人と入れ替わってしまったのだろう?

しばらくして、来た道とは違う道を歩いていることに気がついた。ああ~ここは、いつも、主人が通っている道なのか?吾輩が道路を歩いていると、向こうから来る人が、みんな「こんにちは」と挨拶をしてくれる。すかさず、主人も頭を下げ「こんにちは」と挨拶をする。主人は、この辺で顔が広いのか?はたまた、人間社会ではあたりまえの作法なのか?人間社会っていうものが、さっぱりわからない。いろいろ考えながら歩いているうちに、我が家が見えてきた。そして、ついに玄関の前にたどり着いたのである。

吾輩は、とうとう覚悟を決めた。「主人に怒られても仕方がない。なるようになるさ」と覚悟を決め鍵を開けて「ただいま~」と言うと、すぐさま自分の水槽に向かって一目散に進んだ。そこには、吾輩と入替わってカメの姿になった主人がいた。そして、吾輩はテレパシ-を使い、開口一番にこう言ったのである。

カメ子:ごめんなさい。

すると、主人から思いもよらぬ言葉が返ってきたのである。

主人:何を言っているんだ?謝らなくてはいけないのは、こちらの方だ。「ごめん」お前の許可も得ず、勝手に、入れ替わりシールを使い、入替わってしまった。突然、人間になってしまい、さぞかしびっくりしただろう?

な~んだ。主人が入れ替わりシールを使ったのか?吾輩が悪いんじゃなかったんだ。吾輩は、いささか拍子抜けしたが、予想だにしていなかった話だったので、一瞬頭の中が混乱し、どう返答したらいいのかわからず戸惑った。

その時、最初の入れ替わりシールを使った時のことが頭の中に浮かんできた。あの時は、吾輩が、主人の了承なしに勝手に入れ替わりシールを使ってしまった。だとすると、今回ここで、主人を怒るのは、おかしいなぁ。

そして、こう返答した。

カメ子:そんなに気にしなくて良いよ。

すると、主人は、「ありがとう」と言うと、奥さんの方をちらちら見ながら、なぜだか急に小さな声で話し始めたのである。

主人:実は、最近、うちのやつ(奥さん)が「これしろ、あれしろ」と、家事を強要してきて、うるさいんだよ。

そして、挙句の果てには、「私が先に死んだらどうするの?困るのは貴方でしょ」と言うんだ。もう、ほとほと疲れたよ。そんな時、水槽の中で日向ぼっこをして、何の心配もなく、人生を楽しんでいる、お前を見たんだ。その時、ワシは、「私は貝になりたい」ではないが、「私はカメになりたい」と思った。そして、例の入れ替わりシールを思い出した。最後に1組残っていたシールをお前とワシに張り付けたんだ。お前の足の裏を見てみろ。シールが貼ってあるだろう。

そして、吾輩は、自分の足の裏を見ると入れ替わりシールが貼ってあった。すると、主人は「今日一晩寝て心をリフレッシュし、明日からまた、家事手伝を励むことにするよ」と言って、水槽の奥の方に去って行った。

御主人様、吾輩は、黒猫や犬たちと、もう一度会う約束をしました。これから、人間社会での挨拶や習慣等について、もう少し勉強したいと思いました。これからも入れ替わりシールを使って入れ替わりたいので、よろしくお願いします。

そして、奥さんの言うことを自分の為だと思い、家事手伝いに勤しんでください。吾輩とカメ輔も、なるべくご主人様に迷惑をかけないようにお利口さんにしていますから。

ここでひとまず本章は終了しますが、次回作も期待してくださいね!

 

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読者の皆様へ

今年1年間「カメのひとりごと」を読んで頂き、どうもありがとうございました。

来年は、更なる飛躍の年にしたいと思っていますので、どうぞよろしくお願い致します。

皆様にとって、来年が良い年になることをお祈りしています。                             

  • ※1:第182話 未来からの訪問者(入れ替わりシールPart2)

 

 

第191話 ごめんPart1

カメ子:行ってきます。と言うと、吾輩は玄関に向かって進んでいった。

そして、玄関のノブに触ると、奥さんから

奥さん:気をつけて、いってらっしゃい。鍵は首にかけて、この前のように落とさないでよ。鍵を交換したら、20万円かかるのよ!と言われた。

吾輩は、玄関の鍵を首にかけ「わかった」と言うと、玄関のドアを開け外に出たのである。

あれっ、いったいどうなっているの?なんだか変だなぁ。

吾輩は、玄関にぶら下げている複数の鍵の中からひとつを無意識に選び、それを使って玄関の外に出ることができた。

吾輩は、鏡を見ていないので、今の自分が何者なのかよくわからないが、足の向くまま気の向くまま、町の中を徘徊することにした。すると、どこか、懐かしい場所にたどり着いた。

そして、ふと気がついたのである。

そうだ。ここは、以前花見をしたことのある公園ではないか。

そして、吾輩は、いつのまにか公園にある散歩道を歩いていた。

そこでは、いろいろな人が散歩をしたり、ジョギングをしたりして楽しんでいる。吾輩が歩いている方向は、みんなが歩く方向とは逆回りで、反時計周りだったようだ。吾輩は、もしかしたら、へそまがりかもしれない。

吾輩の前方を40代ぐらいの女性が、犬を連れて歩いていた。たぶん犬種はチワワのようである。(どうして吾輩はチワワを知っているのだろう?)そのチワワは、老犬のようで、口から舌をダラリと垂らし、真っすぐに歩けないようすであった。それで、吾輩は、その女性に向かって話かけてみた。

カメ子:こんにちは、今日は、犬ちゃんの体調が良さそうですね!

女性:そうなんです。今、2周目に入ったところなんですよ。

そして、今度は、その犬が体を斜めにしながら吾輩の方に近づいて来たのである。

そして、その女性が言った。

女性:この子は、よっぽど好きな人以外、絶対に近づかないのに・・・。

それで、吾輩は、犬ちゃんに話かけてみた。

カメ子:ワンちゃん。元気にしていたかい?今日は体調がとても良いようだね。

すると、突然、どこからか声が聞こえてきたのである。吾輩の近くには、女性とこの犬ちゃんしかいない。でも、この女性の声ではない。もしかして、この犬ちゃんの声?

でも、犬が喋ることはないだろうし。あっ、もしかしてテレパシー?吾輩は、そっと犬ちゃんにテレパシーを送ってみた。

カメ子:もしかして、君の声?すると、犬ちゃんが、びっくりして、不思議そうな顔をしながら、

チワワ:そうだよ。でも、テレパシーを使う人間を初めて見た。と言ったのである。

カメ子:なに?吾輩は、人間じゃない。カメだよ。

と言い返そうとしたが。口に出すことを止めた。

カメ子:えっ、吾輩が人間?(しばらくして)やっぱり吾輩は、人間だったのか。だとすると、吾輩の奇怪な行動が至極納得できる。

玄関の所にぶら下げている複数ある鍵を無意識に選び、それを使って玄関の外に出ることができたこと、足の向くまま、気の向くまま進むと、懐かしい場所にたどり着いたこと。それに、吾輩を玄関で見送ってくれたのは、奥さんだ。だとすると、奥さんではないし、あと、残るのは主人ということになるなぁ。

あれっ、もしかして、このシチュエーションは、いつか体験したことがあるような気がする。そう思うと、これまで頭の中でモヤモヤしていた不安な気持ちが失せてきた。そして、前にいる犬ちゃんにテレパシーを使って返事してみた。

カメ子:そうだよ。私は人間以外の動物が使っているテレパしーが使えるのだ。

すると、犬ちゃんは答えた。

犬ちゃん:そうだったのね。このことを、私の周りに住んでいる近所の犬や猫の仲間達にも知らせるわ。みんなびっくりすると思うよ。お友達になって、これからもいろいろおもしろい話を聞かせてちょうだいね。と言った。

そして、40代ぐらいの女性は、「そろそろ残りの道を散歩しようかね。どうも、この子(犬ちゃん)を可愛がってくれてありがとうございます」と言って、吾輩が進む道とは反対の方向に歩いて行ったのである。

主人は相変わらず、人間や動物達に人気があるようだなぁ。吾輩は、犬ちゃんに「私は、人間ではなくカメだ」と言いたかったのだがやめた。

ここで本当のことを言うと、彼女がびっくりして、体調を壊すといけない。と思ったからだ。ここで、そのことを補足しておく。そして、吾輩は彼女の友達になり、本当はカメであることを告白し、いろいろな楽しいことを話していこうと思う。

吾輩は、この後、しばらくの間主人を楽しむことにした。

この辺で、Part1は終了しますが、Part2の最後には思いもよらぬ結果が待っていますので、乞う、御期待!

 

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第190話 能ある亀は頭を隠すPart2

 

*さすが、大物カメ輔! 背中に何かが乗っても、少しも動じる様子はありません。

 

吾輩は、何か嫌な予感がしていた。

すると、今度は奥さんが、吾輩に対してとんでもないことを言ったのである。

奥さん:カメ子、あなたは、どうしていつもガタガタと音を立てて水槽の壁をよじ登ろうとするの?カメ輔のお兄ちゃんなのだから、もう少し静かにしてなくちゃダメでしょう。あなたが私の家に来た時は、500円玉ぐらいの大きさしかなくて小さくてかわいかったのに、ずいぶん大きくなって大人になったものね。

吾輩は、奥さんの発言を聞き、愕然とした。

「ずいぶん大きくなって大人になったものね」とは、吾輩のことを今は大きくてかわいくない。と皮肉を言っているように聞こえてならないのである。

さらに、吾輩が驚愕したのは、水槽の上を網で覆ったのは奥さんだったということだ。

しかも、カメ輔の水槽には網を被せてはいない。

ああ~奥さんは、本当は吾輩のことが好きじゃないのか?

吾輩は、ショックで急に頭の中が真っ白になり、主人や奥さんと会話も交すことができなくなってしまった。

そして、とうとう水槽の隅の暗いところにうずくまり、いつの間にか眠りについてしまったのである。

今日は何か良いことが起こるような予感がしていたが、やっぱり違っていた。

そして、吾輩は、真夜中にふと目が覚めた。

ずいぶん時間も経過し、ようやく、ショックから立ち直ってきたようなので、隣で寝ているカメ輔に昨日起きた「あの事」を聞いてみることにした。

すると、カメ輔から予想もしていなかった言葉が返ってきたのである。

カメ輔:えっ、「あの事」っていったい何のこと?

ああ、「あの事」ね。そのことについて本当のことを言うと、今、僕は人間社会の金融について勉強しているのだよ。

そして、特に気になっていることは、「今後の円の値動き」なのさ。

一時、1ドル160円になったとき、奥さんと主人が、「あーでもない。こーでもない」と意見を交わし心配している様子だったので、僕も内心物凄く心配していた。

食料や燃料を輸入に頼っている現在の日本では、円の変動は、物の価格に影響し、我が家の家計にも影響する。僕たちの餌代と電気代もバカにはならないからね!

僕が金融の勉強をして、少しでも奥さんと主人の手助けができればいいなぁ。と思っているのさ。それで、you tubeから聞こえてくる金融の話を聞いて一生懸命勉強しているのだよ。

吾輩は、何も考えていない自分と比べ、しっかりした考えを持っているカメ輔のこの言葉を聞き、唖然として言葉を見失った。

すると、さらにカメ輔の口からびっくり仰天するような言葉が飛び出してきたのである。

カメ輔:カメ子兄ちゃん。水槽の上を網で覆った奥さんを嫌いにならない方が良いと思うよ。だって、奥さんが、カメ子兄ちゃんのためを思ってしてくれたことなのだよ。

いつだったか忘れたけど奥さんが、「カメ子は、いつも水槽の壁によじ登って外に逃げようとする。もし、私達が家に居ないときに水槽の下に落ちて脳震盪にでもなったら、ひっくり返ったままで、そのまま死んでしまうかもしれない。これは、カメ子のことを思ってやっていることで、決していじめているわけじゃないのよ」と言っていたのを聞いたことがある。

その時、「カメ輔が、吾輩のことを慰めてくれている。カメ輔もずいぶん大人になったものだ」と思い、心の底から感心した。

そして、「カメ輔は何かを持っている」という奥さんの洞察力は間違っていなかった。さすが奥さんの眼力はすごいなぁ。と思った。

そうか、奥さんは吾輩のことを思って温かく見守っていてくれていたのか。

ああ~本当のことが分かって良かった。奥さん、いつも吾輩のことを心配してくれてどうもありがとうございます。本当に感謝しています。

そして、カメ輔。奥さんが水槽の上を網で覆った理由を教えてくれて本当にありがとう。

あっ、そうだ、すっかり忘れていたが、全ての話のきっかけを作ってくれた主人にも「どうもありがとうございます」とお礼を言いたい。

 

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第189話 能ある亀は頭を隠すPart1

 ある日の午後、主人が吾輩のいる水槽に近づいて来た。

吾輩は、「きっと、いつもの巡回だろう」と思い、相手にしなかった。

しかし、主人は、いつもとは違い、水槽全体に被せている板の一部をはずし、その隙間から吾輩をじっと覗いていたのである。

いつもは板もはずさず、こちらをちらっと見て、さっさとその場を立ち去るのに・・・。「なしか?」と不思議に思っていると、今日は何か良いことが起きるような予感がしてきた。

それで、吾輩は、主人に出来るだけ近づきたいと思い、水槽の壁をよじ登ったのである。

そして、主人は、吾輩の顔のすぐ近くまで自分の顔を接近させてきた。

吾輩は、「何か美味しい食べ物をくれるのかなぁ?」と期待して、普段はあまり使わないカメ語で、クスクスとのどを鳴らしたのである。すると、主人は、

主人:おい、カメ子いったいどうした?

いつもはテレパシーで会話をしているのに、今日は、わざわざカメ語で、「どうしたの?」と言ってきたりして。

でも、この後、吾輩が期待していた言葉が主人の口からは出ず、意外な言葉が返ってきたのである。

主人:お前も知っているように、今、我が家にはいろいろな出来事が起こり、ごたごたしている。

それで、お前達の水替えや三度の飯の支度を十分にしてやることが出来ず、迷惑をかけているので、謝罪をしに来たのだ。本当にごめんよ!

主人からは、吾輩が期待していたような良い話はなかったが、なぜかとても胸が熱くなり、「何だ。そんなことか。我が家の事情はみんなわかっているので、あまり気にしないでも良いよ」と答えた。

すると、この後、主人はカメ輔がいる水槽に向かって行った。

そして、水槽の中を覗き込み、主人は言ったのである。

主人:おい、カメ輔。最近ワシらがパソコンでyou tubeを観ているとお前はいつもこちらを向いているなぁ。

もしかして、人間の言葉や人間社会のことを勉強しているのか?

すると、奥さんが突然、主人とカメ輔の会話に割り込んできたのである。

奥さん:カメの世界では、賢いカメのことを「能ある亀は頭(ず)を隠す※2」と言われているみたいだけれど、もしかしたら、カメ輔はそうかもしれないわね。

カメ輔は、たくさんいるカメの中から激選して我が家に連れてきたカメだもの※3。彼は、一番先頭ではなく、いつも二番手を走っているような目立たないカメだったけれど、何か特別な物を持っていると感じたのよ!

彼を選んだ私の目に狂いはなかったわ。

吾輩はそれを聞き、「ほう、なるほど。でもちょっとカメ輔をかいかぶり過ぎだよ」と思った。

このことについては、今夜にでもカメ輔にこっそり聞いてみることにしよう。

そして、この後、奥さんからもっとびっくりするような爆弾発言が飛び出してきたのである。

次回の話は、ますますおもしろくなるので、乞うご期待!

 

※1:なぜ?(大分県の方言)

※2:人間社会では「能ある鷹は爪を隠す」というが、カメの世界では「能ある亀は頭を隠す」と言っているらしい。

※2:第142話 自我のめざめ

 

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第188話 夫源病

※ 久々にカメ輔君が登場!

 

 最近、どうやら、奥さんの体調が悪い様子だ。

大丈夫かなぁ?奥さんが病気になって寝込んだら、我が家は崩壊してしまう。

吾輩は、とても心配なので、いつものように二人の会話を盗み聞きすることにした。

主人:おい、体調が悪そうだなぁ。大丈夫か?

奥さん:それが、大丈夫じゃないのよ。明日、病院に行きたいから連れて行ってくれない。

主人:ああ、いいよ。

そして、翌日の朝になり奥さんと主人は、車で病院に行き、その日の夕方遅くに戻ってきた。

奥さんの病状が気になって仕方がない吾輩は、再び二人の会話を盗み聞きすることにした。

主人:先生から、どこが悪いと言われたの?

奥さん:先生に血液検査と診察をしてもらったけれど、特に悪いところはないと言われたの。

そして、体調不良の原因は、「あなた」が原因じゃないか?とも言われたわよ!

主人:なに~ワシが原因?

奥さん:先生から、最近、何か変わったことはありませんか?と聞かれ、今まで、ずっと昼間は、一人で過ごしていましたが、主人が退職し、ずっと家でゴロゴロして何も手伝ってくれないので、いつもイライラしています。

私が文句を言えば、主人が怒るので何も言えません。

私は、三度の食事の支度と片付け、掃除、洗濯などの家事に追われ、自分の趣味を楽しむ時間やゆっくりお茶を飲む時間もありません。と答えたのよ。

そうしたら、先生が「それが、原因の夫源病です」今、「夫源病」になるご婦人が多いのですよ。と、おっしゃったのよ。

今どきの若い男性は、積極的に家事をやる人が多いそうだが、あなた達ぐらいの年代の男性は、「男子厨房に入らず」というように育てられたので、自分から積極的に家事をすることはない。

それで、奥さん達のストレスが溜まって、体にいろいろな症状が出てくるのだって。

体って本当に正直ね。

妻に夫源病を引き起こす夫のタイプは、妻に何でも依存し、威圧的な話をする。わがままで身勝手な発言をし、気分屋ですぐ怒鳴るなどの特徴があるのだって。

まさしく、あなただわ!

主人:ワシが原因だったのか?すまんなぁ。

ワシは家事をやらないのじゃなくて、やったことがないから、やり方がわからないだけだよ!

ワシは、「坊ちゃん育ち」だからなぁ~

今度から、手伝うからやり方を教えてくれよ!

と言うと、素早く奥さんが切り返して言った。

奥さん:何言っているのよ。あなたは、「坊ちゃん」じゃなくて、「貧乏坊ちゃん」じゃないの。その言葉、よく覚えておくからね!

カメ子:吾輩は、主人のことをロマンチストだと思っていたが、奥さんにとっては、カッコいい人ではなかったらしい。それにしても、奥さんの体に異常がなくて本当に良かった。早く原因がわかり、主人も反省しているようなので、どうやら熟年離婚は、避けられたようだ。あとは、主人の精進次第だ。

奥さん、これからは、我慢しないで主人をこき使っていいからね!

でも、ちょっと不安だ。二人が喧嘩をすると、吾輩とカメ輔に、とばっちりが来るからなぁ~クワバラクワバラ。

 

 読者の皆様へ

2024年8月8日16時43分の日向灘震源とする地震で被害にあわれた方々へお見舞い申し上げます。

我が家も強い横揺れで、カメ子、カメ輔の水槽の水が大きく揺れて飛び散り、床は、ずぶ濡れ。びっくりしたカメ子は、目をクリクリさせていました。

皆様のお宅では、飲料水、携帯トイレ、食料品、医薬品、防災グッズ等の備蓄は出来ていますか?

すでに、スーパーマーケットの店頭からは、飲料水などが無くなり買えない状況になっているそうです。

何も準備が出来ていなくて地震がきたら不安だと思っている方は、楽天のネットショッピングでは、まだ、買えますので、10日分ぐらいの備蓄をしてください。

 

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災害時は、冷蔵庫も使用できなくなりますので、飲み切りサイズがおすすめです。

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1台4役なので、災害時以外でも椅子や踏み台として使用できますよ!

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黒いビニール袋も全てセットになっていますので、便利ですよ!

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軽くて小さいので、バックに入れて持ち歩くのに便利です。

 

 

そして、避難場所、避難所までの経路の確認は出来ていますか?

暑いので熱中症に気を付けながら、ブロック塀、危険個所、到着時間などを徒歩で確認しておくことをおすすめします。

これから、近い将来起こるかもしれない南海トラフ巨大地震に備え、何が起こっても決して諦めない強い心を持ち、未曽有の災害に立ち向かっていきましょう。

                                

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