カメのひとりごと

ニホンイシガメのカメ子が、カメ目線でとらえた人間社会をおもしろおかしく書いています。

第91話 運命が変わる日(Part 2)

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  車のエンジン音が止まった。どうやら目的地

に到着したようである。

車の中から「育ての親の邸宅?」らしき家が

見えた。

さっそく、誰なのかよくわからない謎の女性

が、車を飛び降りて家の中へ入って行った。

そして、主人は、吾輩が入ったバスケットを

持ち車外に出た。

バスケットの中から見る景色は、感無量で

あった。

黄色く実り、頭(こうべ)を垂れた稲穂が

眼下に広がっている。

主人は、前方にある小さな池に向かって

進んで行った。

そして、主人は、「カメ子。ここは、

カメ輔が生まれた場所だぞ。よく観ておけ

よ」と言ったのだ。

吾輩は、「よく観ておけよ」と言ったって、

吾輩はここからすぐ近くの温泉施設で生ま

れたんだぞ。こことは関係ないよ」と思っ

た。

そして、主人は吾輩をバスケットからそっ

と取り出し、池の様子が見えるようにして

くれた。

池には2匹のニホンイシガメがおり、こち

らをじっと観察している。

その風体や上目づかいで見る警戒心丸出し

の様子が、どこか似ている。

「さもありなん。だって、吾輩の兄弟だか

らな。歳も同じ位だろうか?」

そして、主人がちょっと身体を動かすと、

2匹のうち、1匹のニホンイシガメが急に

池の中に飛び込んだ。

ところが、1匹はボーっとして全く動こう

とはしないのである。

吾輩より肝がすわっているなぁ?と思って

いると、主人が、ぽつりとつぶやいた。

主人:カメ子、あれは、本当のカメでは

なく本物そっくりの※1彫塑(ちょうそ)

なんだよ。

プロの彫塑家で、お前の育ての親でもあ

る、Aさんが作った置き物だ。

ワシもはじめは、間違いそうになった。

お互い、自分の人生の中で、あの前人

未踏69連勝の大記録を持つ大横綱

双葉山が言った

「ワレ、イマダモッケイタリエズ

※2我、未だ木鶏たりえず)」の境地

になりたいもんだな。

吾輩は、「また、主人が分けのわから

ないことを言い始めた」と思った。

主人と吾輩は、育ての親の家の中に入

った。

すると、そこには、車に同乗していた

謎の女性と知らない男性が立ち話をし

ていたのである。それを見ていた主人

は、すばやくその男性に近づき、話し

を始めたのだった。

そして、バスケットの中に入っている

吾輩に向かって言った。

主人:おいカメ子。この方が、お前の

育ての親のAさんだよ。ご挨拶しなさい。

それを聞き、吾輩の心はにわかに色めき

立った。

Aさんは、バスケットの中にいる吾輩を

覗き込んで言った。

Aさん:お~。君が(カメのひとりごと)

の本の中に出てくる、ハンサムなカメ子

さんか。確かに男前だし、本の中で大活

躍しているね。

どうやら、Aさんは、既にこの本を読ん

でいて、本の内容をよく知っているよう

だ。さすが、奥さんは用意周到だ。

こんなことは、主人にできるはずがない。

でも、その奥さんがいない。

さて、どこにいるのやら?

まあ、いいか。さあ~話しを続けよう。

吾輩をじっと見つめているAさんの顔を見

て、吾輩も一度もまばたきをせず、

フリーズ状態であった。

すると、吾輩の目から、突然、一粒の涙が

こぼれてきた。

 カメ子:この方が、カメの塑像を使った人

なのかなぁ?

そして、この方がいなければ、吾輩は生ま

れてこなかったし、命の恩人だ。

今日は、失礼がないようにドレスアップ

(奥さんが、いつもより丁寧に甲羅のお掃

除をしていただけだが。)

してまいりました。と心の中で呟いた。

主人は、吾輩が入っているバスケットを

部屋の肩隅に置いた。バスケットの横には、

大きな透明の水槽2基が置かれていた。

その時、隣の水槽から、カメ輔と同じよう

な匂いと、何処かで聞いたことがあるよう

な音「キュッ。キュッ。シュッ。シュッ」

という音が聞こえてきたのだ。

そして、主人は、「おい、カメ子。この小

さいカメ達は、お前の兄弟だぞ。挨拶して

おけよ。色々話すこともあるだろう。」と

言い残し、Aさんと謎の女性との会話に加わ

ったのだ。

そこに残された吾輩は「さて、何の話しを

しようか?」と思った。

カメ子:(顎の関節を鳴らし)カリッ。

カリッ。カリッ。(おい、わかるか。

お前たちのお兄さんだぞ)

すると、           

カメ達:(気道を震わせる警戒音で)

キュッ。キュッ。シュッ。シュッ 

(キャ~、怖いよ、誰だ? 大変だ、

大変だ、○×○×○ )

カメ子:カリッ。カリッ。カリッ。

カリッ。

聖徳太子は一度に7人の話しを聞

き分けることができた。というが、

20匹が一斉に話しをしているので、

吾輩には、何を言っているのかさっ

ぱりわからないよ~)

しばらくして、主人達3人の打ち合

わせも終わったようである。

でも、いったい、何の打ち合わせな

んだろう?

ちょうどその時、家の外で、車が止

まり、2人の男性が家の中に入って

きたのである。

その2人の男性は「〇〇〇です。

今日は、どうぞよろしくお願いしま

す。」と言った。

なぜ、吾輩がAさんと会うことになっ

たのか?

さらに、この出来事が「吾輩の運命

が変わる日」といったいどんな関係

があるのか?

次回の「運命が変わる日 Part3」

でその真相が明らかに・・・。

乞う御期待!

 

※1 彫刻塑造 (そぞう) 

    また、その作品。

※2 木鶏(もっけい)とは、

   荘子(達生篇)に収められ

   ている故事に由来する言葉

   で、木彫りの鶏のように全

   く動じない闘鶏における最

   強の状態をさす。

   また、木鶏という言葉は、

   スポーツ選手に使用される

   ことが多く、特に日本の格

   闘技(相撲・剣道・柔道)

   選手が好んで使用する。

   横綱双葉山は、連勝が69で

   止まった時、「ワレイマダ

   モッケイタリエズ

  (我、未だ木鶏たりえず)」と

   安岡正篤に打電したという

   エピソードがある。

   これを踏まえて横綱白鵬は、

   連勝が63で止まった時に支度

   部屋で「いまだ木鶏たりえず、

   だな」と語った。

   出典: フリー百科事典

   ウィキペディアWikipedia

   

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第90話 運命が変わる日(Part1)

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 吾輩の運命が大きく左右するかもしれない時が、刻々と迫ってきている。

今日がその当日で、奥さんと主人(今日は奥さんが主人公である)は、朝から落ち着かずソワソワしている。

奥さんは、明け方まで「大事な仕事」の準備に追われ、ほとんど寝ていないようだった。

「大事な仕事」って何かなぁ?実は、吾輩は、こっそり奥さんから教えてもらっていた。そして、吾輩も重要な任務を仰せつかったのだ。カメ輔は、任に堪えられないということで教えてもらえなかったらしい(それもそうであろう)それぐらい、極秘中の極秘なのだ。世間に漏れると大騒動になるらしい(大げさな)

奥さんは、その日の朝「覚えられない。どうしょう」と叫んでいる。吾輩は、何が覚えられないのか、どうしてあんなに嘆いているのか、よくわからない。奥さんが、夜遅くまでカレンダーの裏にマジックで何かを書きながら、ブツブツ言っていたのと、何か関係があるのかな?

奥さんの指示で、「あなたは、カメ子とカメ輔の体を水できれいに洗ってね。特にカメ子が、主人公だからね」と言うと、主人は、「ハイ」と答えて、吾輩とカメ輔をベランダに連れて行った。すると、急に奥さんは、「やっぱり、水槽とカメ達は、私が洗うわ。貴方がすると雑だから。」と言い、早速行動を開始した。今日の奥さんは、特別に吾輩の身体を入念に洗ってくれた。とても気持ち良くて、心も洗われる気分だ。それが終わった後、奥さんは、吾輩を小さな透明のバスケットの中に入れた。そして、部屋の隅に行き、何やらを始めたのだ。手鏡らしき物を持ってそれとにらめっこをしながら、顔に何かを塗っている。初めて見る光景だ。しばらくして、出発の時がやってきた。そして、今日も奥さんと主人は、水槽2つをどちらが車まで運ぶかで、口喧嘩を始めた。

そして、いつものとおり、主人が持っていくハメになった。口喧嘩するぐらいなら、はじめから主人が持っていったらいいのにと吾輩は思った。吾輩には、この夫婦の関係は理解しがたい。そして、最後に吾輩とカメ輔を車まで運ぶことになった。

最初は、カメ輔が、小さなバスケットに入れられた。カメ輔は、相変わらずバスケットの中で、ドタバタと暴れている。これじゃ、車の中は騒がしくなるぞ。

そして、本日のメインイベントの中心人物でもある吾輩もバスケットに入れられた。

バスケットの中での適度な揺れは、吾輩にとって、とても心地良かった。吾輩は、車の助手席にバスケットごと置かれた。そして、主人と吾輩、カメ輔は、御大(おんたい)の奥さんを、車の中でじっと待つことにした。

しばらくして、見知らぬ女性が、車のドアをトントンと叩いて乗り込んできた。

そして、その女性が「お待たせ」と言ったのだ。

「えっ」声は聞き慣れた奥さんの声のようであるが、奥さんではない。その女性は、左後部座席に座った。右側後部座席には、バスケットに入れられたカメ輔がいる。相変わらず、バスケットの中でドタバタ暴れている。いつもながら、うるさく落ち着きのない奴である。そして、主人が「出発するぞ」と言い、車が動き出した。とうとう、奥さんが車に乗らないまま、知らない女性を乗せて出発したのである。

吾輩は、大丈夫か?後で奥さんと、もめても知らんぞ。と、思った。

2時間ほど離れたところまでの旅が始まったのである。時々、カーブなどで車体が揺れると、バスケットに入った水が前後左右に「パシャ、パシャ」っと波立ちながら、吾輩の身体と共に揺れるのである。吾輩は、その揺れる水でひっくり返らないように、前足と後ろ足でバスケットの底をしっかり踏みしめていたのだ。すると、見知らぬ女性から「カメ子。さすがね。あなたは、2016年に発生した熊本地震の時、緊急地震速報が鳴り響く中、手足でしっかり踏ん張っていたじゃないの。こんな揺れなんか屁とも思わないわよね」と言ったのだ。「吾輩と奥さん、そしてご主人にしか知らないことをなぜ、この女性が知っているか?」吾輩は不思議に思った。そして今度は、その女性が、隣のバスケットの中でドタバタしているカメ輔に向かって言った。

「*しゃ~しい。静かにしなさい」と遂に爆弾が落ちたのだ。その途端、カメ輔のドタバタが止まった。この女性も奥さんに引けを取らず凄い人である。それからしばらくして、なつかしい匂いが、漂ってきた。これは、昔、吾輩の故郷の温泉宿にやってきたときの匂いと同じであった。もうすぐ、到着だ。

そう、読者の皆様には、黙っていたが、「大事な仕事」とは、我が育ての親に会うことである。しかし、なぜ、今日会うのか、吾輩にはよくわからない。さらに、それが「吾輩の運命を変える日」につながるのか全くわからない。それにしても、大事な奥さんはどこに行ったのかなぁ?

 

*  しゃ~しい:福岡を中心としたエリアで使われている方言。 「うるさい」だけでなく「うっとおしい」「面倒くさい」という場面で使われている。

 

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第89話 角(つの)

       カメの赤ちゃんの ひ・み・つ!_a0262716_19435182.jpg    

       二ホンイシガメの赤ちゃん

      (姫路市立動物園のブログから

       引用)

 

今日は、主人と奥さんが朝から外出し、

夕方、家に帰ってきた。

月に1度、いつも2人で、ある場所へ

行っているようだが、我がカメ達には

どこへ行っているのか教えてくれない。

どうして、教えてくれないのだろう?

吾輩も、家族の一員だぞ!

ところが、今日の2人はいつもの様子と

違っていた。

いつもは、疲れた顔をして帰ってくるの

だが、今日は2人とも少し興奮気味なの

か、顔を赤らめて部屋に入ってきたので

ある。

そして、主人は、一番先に吾輩がいる

水槽に近づいて来るなり開口一番に

言った。

主人:おい、カメ子。お前の行って

みたい所に行って来たぞ!

それを聞いた吾輩は「ピー(カメ語で)

えっ、いったい何のこと?」と聞き返し、

そして、主人は言った。

主人:お前の育ての親に会ってきたぞ。

吾輩は、主人が何のことを言っているのか?

よく分からず、しばらくの間、脳が思考停止

状態になっていたが、少し時間が経って

やっと脳が動き出した。

(カメの脳の記憶容量は、人間と比べると

かなり少ないので許してください)

そして、それを察知した主人は言った。

主人:カメ子、ようやく頭の整理が出来た

ようだな。

それじゃ話しを始めるよ!

お前が知りたがっている両親の存在について

だが、

(吾輩の心臓の鼓動がバクバクしてきた)

もう、この場所には、いなかったよ。

吾輩は、その言葉を聞いて愕然とした。

そして、主人は言った。

主人:わしもお前の両親を、一度で良いから

見てみたかったので、とても残念だ。

あっ、そうだ。

お前たちの兄弟たちを撮影してきたからな。

後でカメ輔と一緒に見たら良いよ。

お前達も、こんなに小さくて可愛いときが

あったのになぁ・・・。

カメ子:なんで、過去形なんだよ!

これで、話しが終わったかと思いきや、

主人が別の話を始めたのだ。

(カメ子:もっと要領よく話してくれよ!)

主人:おい、これから、お前達が知らない

おもしろいことを話すからな。

よく、聞けよ。

お前達が産まれたときは、鼻のところに

角(つの)があったんだぞ!

カメ子:えっ、誇り高きニホンイシガメに、

そんな鬼の頭に生えているような角なんて

生えているわけがないじゃないか。

ご先祖様からもそんな話しは、全然聞いた

ことがないよ。

冗談は顔だけにしてくれよ。

吾輩やカメ輔も絶対信じないぞ。

人権に関わる問題だ。

(カメ子の頭の中の回線が切れてきて、

本人も何を言っているのか、よく分から

なくなってきているようだ)

こんな、聞いたこともない話題の後に、

主人は、真剣な眼差し(まなざし)で

別の話しを始めたが、何だか重い話し

のようだ。

主人:カメ子、お前の意見を聞きたい。

お前はわしら人間と一緒に、同じ屋根の下で

暮らしていて楽しいか?

蛇やイノシシ、カラスから狙われることは

ないし、食べ物や病気の心配もない。

しかし、生活するスペースは水槽の中だけと

いう非常に狭い所に限られている。

それに、人間からいつも観られていて、

プライバシーがない。

一方、外で生きているカメは、家の中の生活

とは全く逆で、自分の好きな所で自由に行動

でき、プライバシーもある。

でも、食べ物は自分で捕るしかない。

餌を捕ったところで、せいぜい小バエか

腐った肉というところだと思うので、お腹が

空くと思うよ。

そして、天敵や台風・集中豪雨等の天災は

勿論、交通事故や人間が仕掛けた罠にかかる

かもしれないので、緊張の連続だ。

恐らく長生きは出来ないであろう。

お前は、どっちが良いと思う?

この質問は、吾輩にとってまさしく

Tobe, or not to be, that is the question.だ。

吾輩は、日頃見せない悲壮な主人の顔と、

あまりにも難しい質問なので、即答は

できなかった。

ただ、主人の顔をじっと見つめているだけ

だった。

吾輩は「主人がこんな質問をするなんて変だ、

何かあったんだな」と思い、主人が立ち去った

後、主人の言ったことをもう一度思い出して

みた。

もし、育ての親がいなければ、吾輩はこの世

にはいなかった。そして、今の主人と奥さんが

いなければ、家つき・Carつき・ばばぁ抜きで

3食・昼寝つきなんて、到底できていないと

思う。よく考えてみると、育ての親の主人と

奥さんに感謝しないといけないなぁ。

しかし、主人の問いに対し、人間さまと同じ

屋根の下で暮らした方が幸福だとは即答出来

なかった。

ご主人様、奥さん素直にお礼が言えなくて

ごめんなさい。

今まで育ててもらって感謝しています。

それと、一度でいいから、育ての親のところ

に連れて行ってください。

大切に育ててもらった、お礼が言いたいと

思っているんだ。

そして、カメ子の思いが、近い将来実現する

ことになり、それがきっかけとなり、

大きな出来事が起きる事になる。

さて、いったいどんなことが起こるのかなぁ?

次回を、楽しみにしてくださいね!

 

※:角(つの):ふ化のときにだけみられる

もので、卵の殻を内側から破るのに役に立つ。

 

 

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第88話 げってん

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 ああ、今日も外が暗くなってきた。

そろそろ、夕食が始まる時間だな。と思っていた。

といっても、我がカメ族の食事時間は決まっている

わけではない。

まったく、主人には困ったものだ。

吾輩にもお腹の準備があるんだぞ!と思っていると、

主人が動き「シャッシャッ」っという、メロディ-が

鳴りだした。

メロディ-といっても、主人がマメ(カメ用の配合飼料)の

入った袋を振っている音なのだ。

そして、今日も「カメ子、カメ輔、ご飯をやるよ」と

主人が宣(のたま)ってきた。

早速、隣の水槽にいるカメ輔は、主人の声がする方向に

「ノッシ、ノッシ」と歩いていっているであろう。

主人は「先に、どちらに餌をやろうかな?」と言った。

吾輩:昔はこだわっていたけど、どっちが先でもいいさ。

どうせ、ご飯ってマメのことだろう?と思った。

半分投げやりだ。今日は、カメ輔が先で、最後は吾輩であっ

た。カメ輔に餌を与えた後、吾輩の番になった。

吾輩は、いつものように、マメに対しては無視して

主人を真っすぐには見ないで、左斜め上から警戒心丸出しで

主人を見た。

それを見た主人は「おそらく食べないだろう。ほら。マメだぞ」と

言い半分諦めムードで、吾輩の目の前の水面にバラ撒いたのだ。

もちろん、吾輩は、カメ輔のようにマメを旨そうには食べなかった。

すると、これまでにはない出来事が起こり、

奥さんから、天の声があった。

奥さん:カメ子は、相変わらずマメをおいしくなさそうに食べるのね。

今日は、今まで我慢してマメを食べてきたご褒美に、カメ子の好きな

湯がいたササミをあげるからね。と言った。

主人は、その言葉を待ってましたとばかりに、ササミを手づかみで、

吾輩の鼻先まで持ってきたのだ。「う~ん」何ともいえない、

忘れかけていたなつかしい良い匂いが、吾輩の顔の周りに漂ってきた。

吾輩は、いつものように毒が入っていないか、もう一度匂いを確かめた後、

大丈夫だと確信し、一気に「がぶっ」と口の中に入れたのだ。

そして、目を閉じて、ササミを口の中で噛んでみた。

すると、ササミの肉什が口の中で広がった。

(まるで、孤独のグルメみたいだなぁ)

吾輩:何と、旨いことか。

そして、静かに目を開けてみた。

すると、目の前には大きな主人の顔があるではないか。

びっくりし、吾輩は思わずササミを食べるのをやめた。

吾輩:ヤバイ。主人には吾輩の弱みを見せたくない。

美味しいものを食べたぐらいでニヤケタ表情を見られたくもない。

俺は男だ。武士は食わねど高楊枝だ。

(本人も何を言っているかわからない。すべて主人の口癖である)

主人は、ササミをくわえたままの吾輩をじっと見つめていた。

しばらくの間、2人に間の時間が止まっていた。

そして、ついに主人が、少し呆れ気味に言った。

主人:カメ子は相変わらずげってんだな。素直に食べれば良いのに。

やっぱり、美味しいものが食べられなくて、

わしのことを相当恨んでいるのかなぁ?ほら、おいしいササミだろ。

それでも、カメ子はササミを口にくわえたまま、食べようとはしない。

そして、主人は、ついに吾輩にダメ出しをしたのだった。

主人:カメ子よ。お前も、歳をとって、ますます、

げってんになったなぁ。いい加減にしろよ。

二人の間には、不穏な空気が流れていた。

そして、ついに吾輩も主人に対して戦線布告をしたのである。

カメ子:そこまで言うなら、吾輩も言わせてもらいます。

これまでずっと、ご主人様を観察してきましたが、貴方もますます

「頑固じじい、げってんじじい」になっていますよ!

主人の歳は、何歳か?よくわからないが、

眉毛が元総理の村山さんのように伸びてしまっているじゃないか。

主人が吾輩に向かって、ぶつぶつ文句を言っている姿を見て、

みかねた奥さんが、とうとう助け船をだしてくれた。

奥さん:貴方もカメ子にそんなこと言う資格はあるの。

貴方も相当、ゲッテンじゃないの。

結婚当初から比べると随分変わったわよ!

(主人:それは、お互い様だろ)

しかも、最近は、日増しに強くなっていくわよ。

カメ子:そうだ。そうだ。

奥さんの攻撃は、これで終わりではなかった。

しかも、最後に思わぬことを言ったのだ。

奥さん:でも、我が家で、最もゲッテンなのはカメ輔よ。

だって、マメ以外のものは、絶対に食べないじゃない。

今まで、刺身やステーキを与えても、まったく、

食べようとはしなかったじゃない。

カメ輔は一見、素直そうに見えて、実は、もの凄いげってんなのよ。

これから、末恐ろしいゲッテンじじいになるわよ。

それを聞いた、吾輩と主人は、急に拍子抜けし、

両者の間の怒りがスウ~ッと消えたのである。

そして、吾輩はその発言を聞いて、ふと疑問に思った。

カメ子:奥さんのカメ輔に対する見立ては、ちょっと違うと思うよ。

3年間、同じ屋根の下で暮らしているので、

カメ輔の性格がわかるはずじゃないの。

カメ輔がマメ以外のものを食べないのは、

ただ、はじめての物を食べる勇気がないだけなのだよ。

食べ物の中に毒を入れられているかもしれないからな。

主人が吾輩のいる水槽から立ち去ると、

口に頬ばったササミをゆっくり噛みしめて食べてみた。実に旨い。

久しぶりの至福の時であった。

奥さんの発言で、吾輩と主人とのバトルは、

しばらくの間は休戦となるだろうな。

吾輩は、いつかは、主人との陰鬱(いんうつ)な関係を修復したい

と思っている。

しばらくして、どうして奥さんがカメ輔を話題にしたのかが、

わかってきた。

吾輩と主人との険悪ムードを改善させるために、

カメ輔のことを言ったんだな。

とても細やかな心使いをしてくれた奥さんに感謝をしたいと思う。

 

げってん:主に九州・山口地方に残る方言で

      がんこで一風変わり物(職人気質の人)

 

 

第87話 我が人生で一番恥ずかしい思い出

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  最近、主人は、吾輩たちを散歩に連れて行ってくれない。

何やらSNSとかをやっているらしく、吾輩たちにかまっている

暇がないらしい。

いささか、人間たちに対する不満が鬱積(うっせき)している。

こうなりゃ、主人が好きな吾輩のパフオーマンスもやらないよ!

今日も、吾輩が楽しみにしている、主人たちの会話が始まった。

だって、良きにつけ悪しきにつけ、人間社会を知る良い機会に

なるんだもん。まず、主人がその口火を切った。

主人:この前、SNSを見ていたら、カメが主人の布団の中で、

おねしょをして、布団のシーツが濡れている映像があった。

そして、それがバレたと思ったカメは、一目散に部屋の隅まで

逃げて行った画像があったよ。画像のテロップは「反省」だったかな。

カメも反省するのかな?反省しないから、犬畜生になったのかなぁ?

吾輩:吾輩はカメで、犬畜生じゃない。失礼なことを言うなぁ。

反省ぐらいするさ。

吾輩は一瞬、主人の言うことにムカッとしたが、その気持ちを

落ち着かせて聞いていた。

すると、吾輩のことについて語り始めた。

何だか、ヤバイことになりそうだ。

主人:ところで、カメ子はどこかで小便をしかぶったことが

なかったかなぁ?

すると、奥さんは、間髪入れずに答えた。

奥さん:忘れたの?あれは、6年ぐらい前だったかしら?

カメ子の公園デビューのとき、あなたがいたずらをして、

カメ子を滑り台の中ほどに置いたじゃないの。

滑り落ちないように、必死に前足で踏ん張っていたカメ子も、

次第に、ズルズルと滑り落ちてしまい、途中でおしっこを

漏らしてしまったじゃないの。

カメは、上に這い上るのは得意だけれど、下に降りるのは苦手なので、

さぞかし怖かったんだと思うわ。

吾輩:ああ~吾輩の思い出したくない過去についに触れられ

てしまった。我が人生で一番恥ずかしい思い出だ。

隣の水槽にいるカメ輔に、この話しを聞かれるとヤバイことになるなぁ。

吾輩はカメ輔の前では、強い兄貴でとおっているのに面目丸つぶれだ。

今度、カメ輔に会っとき、いったいどんな顔をすれば良いのだ。

吾輩が落ち込んでいると、今度は主人が意外な言葉を発した。

主人:そうだった。そんなことがあったなぁ。

でも、それからカメ子を水槽から出して、部屋の中を徘徊させても、

おしっこをしかぶることはなかったよ。

(カメ子:ご主人様、ヤバイよ。そんな事、奥さんの前で言っていいの?

吾輩が、家の中を徘徊するのは、御法度じゃなかったの?

あとで、奥さんからお目玉をくらってもしらないよ!)

もしかして、カメ子は、「滑り台の、しかぶり事件」を反省して、

それからずっと、家の中の床ではおしっこを我慢していたのかな。

昔、わしの実家で、柴犬のタマ(雌犬、血統書付きだぞ)を飼っていた。

わしが車の後部座席にタマを乗せドライブに連れて行き、

あるホームセンターに立ち寄った。

そして、そこに、陳列してあった犬小屋の中にタマを入れ、鍵を閉め、

タマに向かって「バイ。バイ。」と言って立ち去ろうとした。

その時、タマは、捨てられると思ったのか?わしを、悲しい目で見つめ

「クーン、クーン」と泣いていた。

それを見たわしは、かわいそうになり、慌ててタマを犬小屋から出した。

そして家に連れて帰り、後部座席にいるタマを車外に出そうとしたとき、

ソファーの上にウンチが転がっていた。

タマは、怖さのあまり脱糞してしまったのだ。

いや、脱糞しただけではなく、タマは自分のウンチを食べてしまったのだ。

タマは、人間から捨てられると思い、そのショックで脱糞してしまったの

かもしれない。そして、やってはいけない所で脱糞したことに気づき、

反省をして食べたのかもしれない。

タマは、とても、頭が良く賢い犬だったからなぁ。

しばらくして、奥さんは言った。

奥さん:そうね。利口な動物は、人間と同じように反省した

り、人間が嫌がることが何かということが良くわかっていて、

嫌がることはしないのよ。カメ子もそうかもしれないね。

それにしても、カメ子を部屋の中で歩かせたらだめじゃないの。

罰として、今日のあなたの夕飯は抜き!

(カメ子:とほほ。思った通りだ。でも、奥さんは本気で

は、ご立腹してないようだ。吾輩の家の中での徘徊は、

奥さんも暗黙の了解なのかもしれない。それもこれも、今まで吾輩が、

部屋の中ではおしっこをしかぶらなかった賜物(たまもの)なのだ。

もしも、一度でも床の上でしかぶっていれば、たった、一度のメシ抜き

ぐらいではすまない。

主人は遠島(えんとう)、吾輩はおちんちんを切られるであろうな。

(おお~恐わ~)

そして、最後にいつものパターンで吾輩とカメ輔の品定めが始まった。

主人:カメ子は水槽の水の中では、食事をしながらウンチをして、

辺りに蹴飛ばす。まったく、行儀作法はなっとらん。

でも、おしっこやウンチをしてはいけない所では絶対にしない。

ウンチとおしっこのTPOをしっかりわきまえている。

ところが、どうだ。カメ輔にはそれができない。気にもしていない。

したくなったら分別無くどこでもする。たとえ家の中の床の上でも

(カメ子:えっ、そんなことがあったの?そんなこと奥さんの目の前で

言ってもいいの。ダメ出しだよ)

今回、ご主人様は、カメ輔を標的にしているようだ。

これで、吾輩がカメ輔と会っても「さすが兄貴」と、

いつものとおりリスペクト(尊敬)するだろうな。ひと安心だ。

 

山口県の方言:大小便を漏らすこと。

 

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「カメのひとりごと」のプロローグを掲載しています。

どうぞご覧ください。

第86話 不純な心

f:id:antabilog:20200824001725j:plain

 

 

 ああ、今日も暑い1日の始まりだ。

老体(8才で?)は、暑さに弱い。

でも、今日はいつもの吾輩とは違う。

心をうきうきさせながら、あることを期待していた。

というのは、主人と奥さんが良い話をしているのを聞いて

しまったからだ。

それは、近々主人の家のお墓参りに行くという話だった。

その話を聞いて、吾輩は「やった」と思った。

もしかしたら、今日がその日かもしれない。

いつもは、吾輩より遅く目覚める奥さんが、今朝は早くから起きていて、

家の中をうろうろしているのだ。

これは、きっと、何かあるぞ!と思っていると、主人が吾輩の方にやって

来て「おい、カメ子。水替えをするぞ。そして、身体をゴシゴシ磨いて

あげるからな」と言った。

それを聞いた吾輩は「ついに、そのときが来たな」と思った。着々と、

ことが進んでいて筋書き通りの展開だ。

「なぜ?」って、決まっているじゃないか。

身体をゴシゴシされるということは、お墓参りに行くので身体を清める

っていうことだ。

主人は、吾輩をトングで掴みバケッに入れ、ベランダの床の上に下ろした

のだった。

早速、主人はペットボトルに水を入れ、その水を吾輩の甲羅にかけながら、

歯ブラシでゴシゴシと擦り始めた。

ちょっと、甲羅がむずがゆいが、それが実に快感なのだ。

吾輩のゴシゴシが終わったら、今度はカメ輔の番だ。

相変わらず、カメ輔は落ち着きがなく、のたうち回っている。

カメ輔のゴシゴシが終了した後、主人は水槽の水洗いを始めた。

その間、吾輩とカメ輔は、久しぶりに、にらめっこをして遊んでいた。

そして、吾輩とカメ輔はアゴを鳴らしながら会話を始めた。

吾輩:カリッ。カリッ。カリッ。カリッ。

(おい、カメ輔、久しぶりだな。元気にしているか?今日は、

幸せなことが起きるかもしれないよ。楽しみにしていなよ)

すると、カメ輔は相変わらず、脳天気で、

カメ輔:ふう~ん。そうなの。と答えた。

水槽の掃除が終了し、主人は、吾輩とカメ輔をトングで掴み、

水槽の中に入れ、そして、意外な行動をとった。

何と、水槽の中に水を注ぎはじめたのだ。

「えっ、どうして?これから吾輩達をお墓参りに連れて行って

くれるんでしょ。水槽に水を入れてどうするの?」

主人の不可解な行動は続き、今度は、吾輩と水が入った水槽を、

主人と奥さんで持ち上げ、どこかへ運ぼうとしたのだった。

そして、水槽を下ろした所は、吾輩が未だかつて踏み入れたことの

ない未踏の地であった。

「一体、ここで何をするの?」吾輩は首をかしげ、主人の言葉に、

愕然とした。

主人:いいか。カメ子。わしらはお墓参りに行ってくる。

しっかり留守番をしていてくれよ。ここなら、ヒンヤリして、

クーラーがなくても気持ちが良いし、(吾輩:相変わらずケチだな)

家の仏様の前で祈っていなさい。

と言ったのだった。

吾輩:え~。吾輩は留守番か?朝、奥さん達が話をしていたときから、

ずっとお墓参りに行けるのを楽しみにしていたのに、なんてこった。

吾輩は、横の水槽にいるカメ輔に向かって、話しかけた。

吾輩:おいカメ輔。こういうこっちゃ。一緒にお墓参りに行けると

思ったのに、期待させてすまんな。

すると、カメ輔は、

カメ輔:うん、いいよ。毎度のことだもの。

と答えた。

カメ輔にとって、お墓参りなんてどうでも良かったのだ。

(カメ輔はお墓参りに、まったく興味がなかったのである。)

吾輩はしばらくの間、頭の中が真っ白であった。

そして、ふと我に返り、気が付くとまた、新たな疑問が生じたのである。

吾輩:それにしても、ここはどこだ?ちょっと暗いが、涼しくて何だか

心が落ちつく所だな。

そして、最後に主人が言ったことばを思い出した。

「家の仏様の前で祈っていなさい」

とすると、水槽の向こう側には、小さいが荘厳さを漂わせる箱らしきもの

がある。もしかして、あれが仏壇というものか?今は扉を閉じているが、

その中には仏様が入っているのかも知れないな。吾輩は、先ほど主人が

言っていたことを思い出し、仏様に向かって手と手を合わせて?合掌した

のだった。しばらく仏壇に向かって祈っていると、いろいろな声がはっきり

と聞こえてきた。

お墓参りに連れていってもらえなかったのは、仏様が吾輩の不純な心に

対して罰を与えたのかもしれない。

吾輩のお墓参りは、ご先祖様に感謝を込めてということではなく、お墓参り

のついでに、ドライブを楽しむつもりだった。

今から思うと、お墓参りに行けなかったことが、かえって良かったのかも

しれない。もし、お墓参りに行っていたら、新型コロナに感染するかも

しれないし、車のドライブで、吾輩は、何時間も小さいバケッの中で揺れる

羽目になり、車酔いしていたかもしれない。いろいろ考えていると、清々しい

気持ちになってきた。これも、仏様のお導きで、ご先祖様と心が通じたのかも

しれないな。お墓参りにも行かず「不要不急の外出?」を避けるといった政府

新型コロナウイルス対策にも協力しているし、吾輩は、なんて良い国民?

なんだろう。

今日はカメ輔と一緒に、いつ帰ってくるかわからない主人達をじっと待って

いることにしよう。

でも、そろそろお腹がすいてきた。

ご主人様、早く帰ってきてくれよ! 次回も、おもしろいよ!乞うご期待!

                    

     プロローグから第84話までは、「かめのひとりごと2」

        https://iamkameko2.hatenablogs.jp/ 

        に掲載していきますので、お楽しみに!

                      

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第85話 敵は本能寺にあり 

本能寺にf:id:antabilog:20200814230606j:plain

 

 

 吾輩は、今、Sとはうまくいっていない。

読者の皆様、Sとはいったい誰のことだかわかるかな?

さあ、話を進めるぞ。

主人と奥さんは、また、吾輩とカメ輔のことで何やら話しをしている。暇な吾人(ごじん)である。でも、その会話を拝聴する吾輩も暇な吾人である。どれどれ、聞きたくない話しかな?でも、どうせ耳に入ってくるので仕方がない。聞くことにするか。

主人:今でも、わしに対するカメ子の態度がおかしい。

水槽を覗き込むと、カメ子は、上目づかいの冷たい目線でわしをジッと睨み返すんだ。それが、昔より一段とエスカレートをしているように感じ、まるでわしを敵扱いしているようだ。

「カメ子、カメ子」と呼んで、カメ子を安心させようとしても、カメ子は、わしをじっと見たまま、座して動かず。そして、カメ子に近づき、わしが身体をちょっとでも動かそうと

すると、カメ子は電光石火のごとく身体を後ろ向きにし、水槽の壁に向かって逃げるんだ。最後には壁に這いつくばって水槽の外に出ようと両足をバタバタさせる。どうしてだろう?

突然、主人がこんな話しを切り出したので、吾輩はにわかに心がいろめきだしだ。

すると、奥さんは、

奥さん:えっ、そうなの?カメ子は私にはそんなことしないわよ。

と、あっさり言ってのけたのだ。

主人:ふう~ん。ワシはカメ子に嫌われているのかな?何か悪いことしたかな? 

いや、そんなことした覚えはないよ。あ~待てよ。待てよ。

その時、吾輩は主人のその後の言葉に注目した。問題の核心部分だ。

そして、主人は言った。

主人;もしかして、カメ子は、そろそろ、マメ(市販のカメ餌)に飽きてしまったのかな?

吾輩:そうだよ。そうだよ。そうなんですよ。

Sとうまくいっていないのは、そこなんだよ。

吾輩は、心の中で、そうつぶやいた。

もう、読者の皆さまは、察しが付いているとは思いますが、

Sとは主人のことなのです。

吾輩は、奥さんから「私もそう思うよ。そろそろカメ子の好きな刺身とかをあげても良いんじゃない」という言葉を期待していた。

すると、奥さんからは、意外な言葉が発せられた。

奥さん:そうかもね。でも、絶対あげたら駄目よ。カメ子の好きな食べ物を与えるなんて。カメ子を殺す気なの?カメ子の好きな食べ物は、油っぽいものばっかりだし、パンとか炭水化物が多いじゃないの。他のカメはミニトマトやスイカをおいしく食べているのよ。だから、カメ子はぶくぶく太るのよ。(吾輩:失礼である)短命間違いなし。病気になったら治療費だって、高いんだから払えないわよ。

(吾輩:奥さんは怖い)それに、私が、また、刺身を買うために毎日スーパーに行かないといけなくなって、コロナに罹ったらどうするの?

吾輩は、奥さんが「しかたがないわね。久しぶりにカメ子においしい食べ物をあげようか」と、言って援護射撃をしてくれることを密かに期待していたが駄目だった。

Sとは、主人のことであると言ったが、吾輩とカメ輔の本当の敵は、主人の後に控える奥さんだったのである。「敵は本能寺にあり」だ。吾輩は愕然とすると同時に、奥さんに対して失望してしまった。

主人は、いつも「カメ子、カメ子」と変な声を出して、水槽に近づき、吾輩を覗き込む。プライベートもなにもあったもんじゃない。何せ、天井がない家だからなぁ。しかたがないかぁ。

それに比べ奥さんは、変な声も出さず優しく水槽を覗き、吾輩を驚かさないように気を使ってくれ、夜遅くまで電灯がついていて、吾輩が寝られないでいる時は、そっと電灯を消してくれる。

吾輩が食事をしている時は、決して水槽を覗き込むことはしない。気配りの奥さん。

気配りのない主人。雲泥の差だ。だから、主人とはうまくいってないんだよ。

でも、刺身などの美味しい食べ物を与えてもらえず、我慢させられている元凶は、奥さんだなんてどうも信じられない。まあ、いいさ。主人と奥さんは「どうせ我が亀族のような弱い者いじめをするのが楽しんでしょ。」と、吾輩は半分投げやりになっていた。その夜、吾輩は今日あった嫌な出来事をもう一度思い出してみた。どうして、主人達は我が亀族のような弱い者いじめをするんだろう?主人達にとって何も得はしないはずだ。なぜだ?あっ、待てよ。あの時、奥さんが何か言っていたな。「カメ子の好きな物を与えるなんて絶対ダメよ。カメ子を殺す気なの?カメ子の好きな食べ物は、油っぽいものばっかりだし、パンとか炭水化物が多いじゃない。だから、カメ子はぶくぶく太るのよ。短命間違いなし」というフレーズだったな。もしかして、「亀族のような弱い者いじめをする」ことが目的ではなく、我がカメ達が短命にならないよう、刺身を与えないことが目的だったかもしれない。これは、また、「敵は本能寺にあり」だ。でも良かったよ。奥さんは、良い意味での「敵は本能寺にあり」だった。吾輩も、もう少

し我慢をしてマメを食べることにするよ。だから、ご主人様、もう少し我がカメ達にも気を遣って行動してね。

 

天正10年(1582)明智光秀備中の毛利勢を攻めると見せかけて出陣し、京都本能寺織田信長を襲ったところから》本当の目的・目標は別にあるということ。

 

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